第51回大河内記念技術賞
鋳造同時接合によるアクスルハウジングのFCD化
1 開発の背景
大型トラック用のアクスルハウジングはこれに作用する荷重が大きいことから、従来より鋼鋳物(鋳鋼)で製造され、鋼製のアクスルチューブを溶接し、実用に供されてきた。しかし鋳鋼は、・製造現場での高熱作業と、鋳造後の仕上げにガウジングと称する劣悪環境下での溶断作業を要する、・製品の鋳造歩留まりが悪い、・鋳造後の熱処理を必要とする、・コストが高いなどの欠点を有していた。そこで、鋳鋼と同等以上の機械的性質を有し、鋳造性に優れている球状黒鉛鋳鉄(FCD)でこれを製造することを検討した。しかし、FCDは溶接性が極めて悪く、これまでは欠陥補修程度に溶接が用いられるに過ぎず、新しい技術開発が必要になった。
2 特徴と成果
本技術開発は、FCD製のアクスルハウジング(170kg)に鋼のリングを直接、鋳造接合する技術を確立し、この鋼のリングにアクスルチューブを溶接する手法を考案し、高荷重のかかる重要部品への実用化に世界で初めて成功したものである。その結果、・劣悪作業のガウジングが不要、・製造コストの20%削減、・製造時のCO2発生量の25%削減、・材料歩留まりの向上(50%→58%)、・10%の軽量化、部品の信頼性の向上などの成果を得た。この技術開発は大型トラックを中心に進められ、現時点では日野自動車の大型トラック6車型全てに採用され、生産量は月産2,800本に達している。
3 将来展望
この技術は次の展開として、日野自動車では今後、トラック他車型にも適用を拡大すべく検討を進めている。また、本開発によりFCD鋳物の溶接構造物への展開を可能にした。これらの成果は、単に鋳鋼製アクスルハウジング部品のFCD化に止まらず、溶接構造物である大型機械構造部材へのFCD鋳物の適用拡大に寄与することも大いに期待される。