第60回大河内記念技術賞
ナノ多結晶ダイヤモンド合成技術及び応用製品開発
1 開発の背景と内容
ダイヤモンド工具の素材としては、従来は、単結晶ダイヤモンドや焼結ダイヤモンドが広く利用されてきたが、単結晶ダイヤモンドは偏摩耗や劈開性により短寿命であり、また、結晶成長に数十時間の長時間を要すること、焼結ダイヤモンドは結合材(バインダー)が耐熱性に劣るなどの問題点があった。本業績は、15GPa以上、2300℃の超高圧・高温下で、黒鉛を直接変換して得られるナノ多結晶ダイヤモンドの合成技術を開発し、精密刃先加工技術と組み合わせて、ダイヤモンド工具の上記の問題点を一挙に解決し、超硬合金や超硬質脆性材料の精密切削加工を可能とするとともに、加工時間の大幅な短縮を実現したものである。
2 特徴と成果
① ナノ多結晶ダイヤモンドの合成技術では、高圧金型素材の開発、マルチアンビル装置による等方圧縮の最適化、温度制御を組み合わせて、量産可能な金型設計に世界で初めて成功した。黒鉛を直接変換して得られるナノ多結晶ダイヤモンドの合成により、従来の単結晶ダイヤモンド製造に比べて1/50以下の短時間化を実現している。
② ナノ多結晶ダイヤモンド刃先加工の高精度・高速研磨技術では、炭素との反応性を積極的に利用する化学反応研磨により、ナノ多結晶ダイヤモンドバイトの刃先加工の格段の高精度・高速化を実現し、精密・微細加工用工具としての製品化に成功している。
3 将来展望
ダイヤモンド工具の素材に革命を起こしたナノ多結晶ダイヤモンド合成の量産技術を世界で初めて開発し、精密刃先加工技術を組み合わせて、超硬合金や超硬質脆性材料の精密切削加工が可能な工具として製品化しており、従来の単結晶ダイヤモンド工具の市場を席捲する可能性を秘めている。また、従来のダイヤモンド材料では対応できなかった新規用途への展開や、工学・電子・自動車等の製造技術の向上や製造コストの低減にもつながり、今後、産業界や社会への大きな貢献が期待できる。