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第57回大河内記念技術賞

最先端LSIを実現したArFエキシマレーザーリソグラフィ用
新規レジスト材料の開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
情報化社会の基盤を形成するLSIの高密度・高集積化は、シリコン基板上に形成される回路の加工寸法を極限まで微細化する技術によって進展してきた。この微細化技術の核となるのがレジスト材料を用いた光リソグラフィであり、回路寸法45nmに達する最先端LSIの製造には現在、波長193nmのArFエキシマレーザが用いられている。このプロセスの実現には、従来の芳香族系レジスト樹脂に代えて、ArFレーザ波長での透明性、ドライエッチング耐性、基板密着性、解像性等を満足する新たなレジスト樹脂の開発が不可欠であった。
本研究開発では、これらの要求性能を満足するレジスト樹脂の基本分子構造を探索し、世界に先駆けてアダマンチルメタクリレート誘導体ポリマー樹脂を開発した。
さらにラクトン基含有モノマーとの共重合法による改良を加えて基板密着性、解像性の向上も実現させ、ArFリソグラフィ用レジスト材料の実用化を達成した。本技術開発を基盤とするArFレジストは、現在、最先端LSI製造に不可欠な製品となっている。

 

2 特徴と成果
本業績は、ArFレーザを用いる光リソグラフィに基づく最先端LSI製造に不可欠なレジスト樹脂基本素材として、光透過性とドライエッチング耐性に優れたアダマンチルメタクリレート誘導体ポリマーを世界に先駆けて開発したものである。さらに独自の改良を加え、基板密着性、解像性にも優れた、ArFレジスト材料の実用化に成功している。
現在、ArFレジストを用いて製造される最先端LSIの市場規模は全世界で10兆円以上と推定されるが、国内外のレジスト製造メーカーにおける本技術に基づくArFレジストの2009年度推定出荷額は300億円を超え、国内外市場での占有率は90%を超えると推計される。

 

3 将来展望
本技術開発は、最先端LSIの製造に不可欠なArFレジストの開発を世界に先駆けて達成したもので、半導体産業の発展に直接貢献している。
さらに回路寸法28nmに達する次世代LSIの製造プロセス(液浸によるDP)での適用も確実視されることから、わが国のレジスト製造メーカーの技術競争力を先導した意義も大きい。また本技術は、わが国でこれまで推進されてきた先端機能性高分子材料開発の成功例としても高く評価される。