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第54回大河内記念生産賞

半導体超微細パターン計測用測長SEM*の開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
半導体集積回路LSIは約30年にわたり、回路パターンの最小線幅が3年毎に70%微細化している。線幅の許容公差は、線幅の±10-15%であり、これを測定する計測器の精度は最小線幅2-3%の精度が要求される。MOSLSIの最小線幅が1μmまでは、光学式の線幅測定器が使用されていたが、1μm以下では走査型電子顕微鏡(SEM)による測定が必要と考えられた。
しかし、当時の電子顕微鏡は研究者用の理化学装置であり、これを半導体製造ラインで使用することは様々な点で困難であった。そこで、電子顕微鏡を半導体の量産ラインの計測器とするため、安定で誰でも使える装置ならびに計測システムの開発を行ない、初代「測長SEM」を1984に発売、また、測定器のトレーサビリティを確保する倍率校正用「標準マイクロスケール」を計量研(現産総研)、日本品質保証機構(JQA)と共同で開発した。その後のLSIの継続的微細化に先行する技術開発と製品化を行ない、開発以来、常に必要とされる測定精度とトレーサビリティを満足する測長システムを提供してきた。

 

2 特徴と成果
1) 1984年の初代「測長SEM」は、当時の電子顕微鏡の常識を破る以下の特徴を有した。
1 測定対象に帯電防止コーティングをせず、電子線ダメージのない非破壊計測を可能とした低加速電子顕微鏡、
2 暗室を不要とし、半導体製造ラインでその場測定できる高輝度FE電子銃の世界初の実用化
3 微細パターン計測に特化し、製造ラインのオペレータが使用できる自動測定機能
2) その後、測定精度を向上させるため、初期は低加速電子顕微鏡の分解能・検出効率の向上、後期は主としてシステム全体のノイズ対策を実施し、2006年に発売した新型機では、2010年に量産化予定の最小線幅45nmパターンにも対応できる測定精度0.3nm(3σ)を達成した。
電子顕微鏡を計測システムとするために、当時世界最小240nmピッチの倍率校正用「標準マイクロスケール」を開発し、これも現在では、さらに100nmピッチに微細化しJCSS(計量法認定事業者制度)準拠の計測システムを開発実用化した。
3) 以上の結果、「測長SEM」は発売以来3000台以上となり、2006年度の市場占有率は、米国調査会社のデータによれば、世界市場で77%、国内市場で83%であり、半導体業界において、計測技術で半導体の微細化に貢献している。

 

3 将来展望
本技術は、電子顕微鏡の工業応用であるので、従来の線幅測定だけでなく、2次元画像計測による形状計測技術の開発により、更に微細化が計画されているMOSLSIの計測に十分対応できる。また、近年注目されているナノテクノロジー関連産業に対しても、計測技術で貢献することが期待される。

*SEM: Scanning Electron Microscopy