第54回大河内記念生産特賞
サルファーフリー燃料の製造技術の開発と実用化
1 開発の背景と内容
わが国では全体の2割に達する自動車など輸送部門における温暖化ガスCO2の排出量削減は、今や全世界的な緊急課題である。それ故、輸送用燃料であるガソリンおよび軽油の超低硫黄化は自動車における燃費向上によるCO2排出抑制、SOX排出抑制によるクリーンな排気ガス化という両面から必須の課題であった。それには、従来よりガソリンで100ppm以下および軽油で50ppm以下とされていた硫黄含量をサルファーフリー燃料と呼ばれる10ppm以下にする技術の開発を必要とした。
本業績は、従来の石油精製装置の改善では到達し得なかったサルファーフリー燃料の工業的精製法を、新世代高機能かつ高選択的脱硫触媒、ならびに新装置の開発により達成した画期的な技術開発に関するものである。
2 特徴と成果
1) ガソリンの脱硫においては、従来のコバルト・モリブデン触媒により脱硫を行うと、含有するオレフィン系炭化水素が水素添加されてパラフィンとなり、オクタン価が低下する問題点があった。そこで、触媒の活性金属量および担持方法を検討した結果、コバルトの量を最適化し、かつ高分散担持することにより、高い脱硫率を維持したまま、オレフィンの水素化率が極小となる高選択的触媒の開発に成功した。
2) さらにこの触媒の性能を最大限に発揮するプロセス「ROK-Finer®/ロックファイナー®」を開発・建設して生産技術を確立した。
3) また、軽油においては、同様にコバルト・モリブデン触媒を使用するが、アルミナ担体の高表面積化や触媒調製方法の工夫により、モリブデンをナノレベルに高分散化させることにより高い脱硫活性を持つ触媒調製に成功した。これらの触媒は、安定で長期間連続使用が可能で、オフサイト焼成再生により再利用されており、資源の有効活用と廃棄物の削減が果たされている。
以上、本業績はガソリンおよび軽油の製造に関して、高選択で高活性な触媒の開発により、さらには新プロセスの開発および緻密な運転・品質管理により、硫黄分10ppm以下の燃料の工業的製造を達成し、高効率的なサルファーフリー燃料の安定供給に成功した画期的技術である。
3 将来展望
本業績は、CO2やSOXの排出を抑制し得るサルファーフリー輸送燃料の工業的製造法を確立した環境に優しい純国産の革新的技術である。グローバルスタンダードともいうべき中核技術として特許ライセンス等の形で全世界的に広く使用が拡大しつつあり、今後の持続可能な社会を築く取り組みとして、重要な意義のある極めて優れた業績である。