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第53回大河内記念生産賞

手ブレ補正機能付コンパクトデジタルスチルカメラの開発と量産化

 

1 開発の背景と内容
専門家の特殊技術であったカメラ撮影を一般の人でも普通に行えるものにするために、過去には、自動露出調整と自然焦点合せの二つの大きな技術開発があった。そしてもう一つ残されていた課題が、手ブレ防止機能であった。大型のビデオカメラなどでは、手ブレ防止機能がすでに実現されていたが、その小型化は容易ではなく、特に一般の人が手軽に使える小型カメラの分野でこの機能が切望されていた。本業績は、このような背景の下での要望に応えて、商用の小型スチルカメラに世界で初めて手ブレ補正機能を搭載することに成功したものである。

 

2 特徴と成果
手ブレの主要原因であるカメラの回転をジャイロによって検出し、それによる像の位置ズレをレンズ光軸の平行移動によって補正するという原理で、コンパクトデジタルスチルカメラに手ブレ補正機能を実現した。これを可能にしたのは、
1) 小型手ブレ補正ユニットの高精度組立て技術、
2) 高屈折率ガラス材を用いた非球面レンズのモールド成形技術、
3) ナノメートルオーダでレンズ形状、光軸ズレなどを測定することのできる超精密計測・検査装置および工程の開発、である。
これらの技術を総合的に生かした生産システムによって、レンズ、本体を含めた部品の製造から、組立て、検査まで、すべて同社で内製する体勢を整え、他社より2年近く先行して、手ブレ補正機能を搭載したコンパクトスチルカメラの商用化に成功した。そして、同社が生産するすべてのカメラ機種にこの手ブレ補正機能を搭載するに至っている。その結果、世界市場で過去3年間に、生産台数約1400万台の生産実績を達成している。また国内では、発売から3年半経った2006年においても、未だ手ブレ補正機の占有率において他社を大きく引き離している。

 

3 将来展望
自動露出調整機能、自然焦点合せ機能が過去にそうであったように、本実績により、今後、手ブレ補正機能は、デジタルスチルカメラでは必須の機能となるであろう。さらに、この小型の手ブレ補正ユニットは、カメラ付き携帯電話や、車載用カメラなどへの展開も予想される。これらにより、手ブレの自動補正はもはや当たり前という新しいカメラ時代の潮流を作る勢いであり、大きな社会的貢献をもたらす生産技術である。