第52回大河内記念生産賞
薄厚メモリチップの多段積層マルチチップ パッケージ量産技術の開発
1 開発の背景
携帯電話の高機能化が急速に進み、メモリの大容量化と高密度実装が求められている。この要求に対して、裏面を研削して薄くしたICチップを積み重ねる積層マルチ・チップ・パッケージ(MCP)が最も有力な方法として開発と実用化が進められてきている。
MCPパッケージの厚みは、組み込む機器の厚さの制約から1.4mm以下にすることが求められており、2段積層のMCPが携帯電話に初めて搭載された1998年から、ほぼ1.5年に1段ずつ積層数が増えてきているが、2003年ではウエハ厚85μm~100μmで6段のものが量産技術としての限界であった。携帯電話用MCPの大容量化とモバイル機器の高機能化を推進するために、チップをさらに薄く加工し、多段に積層する技術の開発に総合的に取り組み、世界で初めて9段のMCPの量産化に成功した。
2 特徴と成果
3層構造保護テープを考案することにより、反りの発生を押さえてウエハを70μm厚に研削する技術、接着シート厚10μmで貼り付ける技術、立体的に高密度に各段のICチップと基板間を配線できるワイヤボンディング技術などの、革新的な生産技術を開発することにより、世界で初めて9段積層MCPを実現し、量産化に成功した。この業績は各製造工程の現場の技術者の創意工夫と多大な試行錯誤によってなされたものであり、高度な考案と多数のノウハウからなる総合的な生産技術開発の成果である。
3 将来展望
第3世代携帯電話の普及とメモリカードの大容量化に伴い、本技術による製品の2000年での年間売り上げが100億円、2007年での売り上げが200億円に拡大することが予測されており、数年のうちには1000億円に達するものと期待できる。
携帯電話の高機能化やメモリカードの大容量化の要求は、今後ますます増大することは確実であり、本技術に基づき多段積層化技術をさらに発展させることにより、これらの要求に応えることができる。そして、将来のモバイル機器において、磁気ディスクメモリーが担っていた領域にICチップが展開できるなど、用途は格段に拡大するものと予測できる。