第71回大河内記念生産賞
熟練者ノウハウを反映可能な生産計画最適化技術の開発と実用化
株式会社日立製作所
1 開発の背景と内容
従来、生産計画の立案には熟練工のノウハウが必要とされてきた。それは制約条件を「なるべく守る」といったようなあいまいな条件を吸収し、フレキシブルに生産計画を立案するのに重要であった。しかしながら、少子化の下、熟練工が次々と引退する情勢の中で、そのようなノウハウは失われつつある。そこで、熟練工の持つノウハウをデジタル化し、熟練工に匹敵する生産計画を立案する技術を開発し、実用化することが課題となっていた。本開発では、機械学習技術と計画最適化を統合することにより、MLCP(Machine Learning Constraint Programming)という技術を開発し、上記問題を解決した。そこでは熟練工のノウハウをパターンとして学習し、柔軟な最適化設計の自動生成を実現した。
2 特徴と成果
上記MLCP技術の特徴は、以下の3つの要素技術の開発と統合にある。(a)制約条件遵守パターン抽出技術、(b)多目的最適化における選考パターン抽出技術、 (c)機械学習と計画最適化連携技術。(a)にて熟練工の柔軟な計画立案パターンを抽出し、(b)にて複数の制約間の優先パターンを抽出し、(c)にて(a)と(b)の両者を統合して最適解を導く。特に、(c)にて、機械学習と最適化を密結合して、データ量に応じてバランスをとった最適生産計画ができることが他社にない特徴である。本技術により、自動車部品製造企業では在庫コストを40%削減しつつ計画立案業務時間を 88%削減することができた。2025年現在、食品生産企業、半導体製造機器生産企業などに計画自動立案システムが導入され稼働中である。
3 将来展望
世界的に熟練工が少なくなっていく情勢の中で、本技術は熟練工のノウハウをデジタル化するためのベンチマークとなると期待できる。本技術に、業種を横断した拡張性を持たせることにより、生産技術継承の範囲を一層拡大できるものと確信する。熟練工の生産計画に限らず、数値化・定量化が難しい、あいまいな工業技術の再現についても、本技術はそれを実現するための道標となるであろう。