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第50回大河内記念技術賞

分子のダイナミズム解析が可能な高速共焦点顕微鏡の開発と実用化

 

世界的なヒトゲノム解読プロジェクトが終了した。その結果、各遺伝子から発現する蛋白質が、生きた細胞内においてどのような働きをしていくのかを解明することが、これからの時代の最重要課題となった。

生きた細胞内の蛋白質等の分子のダイナミズム解析のためには、細胞内の分子の動きに追いつくために、1msレベルの高速計測が必要となる。また、極めて微弱な蛍光を放つ1分子~数分子を検出できる超高感度、高SN比(信号ノイズ比)が必要であり、更に、細胞内における分子の3次元的位置の計測が必要となる。

横河電機は、これらに対応するため「マイクロレンズアレイディスク」と「ピンホールアレイディスク」を組み合わせ、試料上に、1000本の光ビームを一度にスキャンする「マルチビーム共焦点スキャナ方式」を考案した。

リコーは、蛍光ノイズを発生させない素材で長焦点距離の「マイクロレンズアレイディスク」を作成した。横河電機は、これらを高速モータ上に極めて精密に組立て、製品化に成功した。

その結果、世界最高速である1秒間に1000画面の計測が可能となり、(従来の1000倍)心筋細胞のCaウェーブ、スパーク等のダイナミズム計測、脳神経細胞の計測が可能になった。また、ビデオレートでの1蛍光分子計測が可能となった。更に、1秒間での細胞内の3次元計測も可能となった。

ポストゲノム時代において、本顕微鏡は生体細胞の機能や構造解析の動的機能の解析ツ-ルとして、基礎的なバイオ研究のみならず、新薬の開発や、病理診断分野でも大きな貢献をするものと期待されている。