第50回大河内記念技術賞
横波(SH)型弾性表面波を用いた
超小形中間周波数用フィルタの開発と実用化
移動体通信用や民生機器に使用されている中間周波数(IF)用弾性表面波(SAW)フィルタは、サイズが大きく、小形化の要求が強かった。IFフィルタに要求される狭帯域から超広帯域な様々な帯域に応じ、以下に示す2種類の新しい横波型(SH)型SAWの特徴を活かし世界初、世界最小のIFフィルタの開発、実用化に取り組んだ。
従来のフィルタは、SAWを励振するすだれ状電極(IDT)とその両側に多本数の電極指から成る反射器とから構成される。
(1) 超広帯域なフィルタに対し、斬新な幾多の技術開発により多くの困難な課題を克服し、SH型SAWの圧電セラミック基板端面での完全反射を利用し、上述の反射器の不要な、従来比 3/10の超小形なフィルタを世界で初めて開発した。
(2) 狭帯域と良好な温度特性を要求されるIFフィルタ用に、重い金属電極と特定の水晶を組み合わせることにより、良好な温度特性、従来のSAWに比べ30倍の反射係数と2倍の圧電性を持つSH型漏洩SAWを開発した。この特性を利用することにより、従来の1/10のIDT本数と1/35の反射器用電極指本数とでフィルタが構成でき、従来品に比べ1/5の超小形なIFフィルタを世界で初めて開発した。
今後の携帯電話、車の高度情報通信システム(ETC、狭域通信、車のナンバーディスプレー)等用機器の小型化、高性能化、低コスト化、普及への貢献が期待されている。