第52回大河内記念生産賞
非感光ポリイミド法による携帯電話用液晶ディスプレイ向け
高性能カラーフィルターの開発
1 開発の背景
今や携帯情報端末へと進化しつつある携帯電話の液晶ディスプレイには、映像、文字情報などについて非常に高度な画質表示性能が求められるようになってきた。この目標を達成するにはパソコン並の高精細化、テレビ並の高色再現性、そして明るさの異なる環境で明瞭に見て取れる優れた視認性を小型のLCDで実現する必要があり、そのためにはカラーフィルターの高性能化技術が必須の要件である。20年以上前から、東レは世界に類のない非感光ポリイミド法による高性能カラーフィルター製造技術の開発を進め、1993年に量産化を開始した。
2 特徴と成果
カラーフィルター製造には着色機能と感光機能が必要であるが、両者は互いに矛盾する側面を持っているため、非感光ポリイミド法はそれぞれをカラーペーストとフォトレジストに分離分担させる世界で唯一の方式を採用している。本法の優れた面として、カラーペーストの顔料高濃度化による鮮明な画像と、フォトレジスト能力を最大限に活かした高精細ライトホールによる明るい画像を同時に達成した。さらに本法の特長を活かしたブラックマトリックスの細線化による高精細化技術と合わせて高性能カラーフィルター製造技術を実現した。他方、機能を分離分担させたため工程数が多くなったが、生産技術の高度化、リカバリーシステムなどにより極めて高い歩留まりで製造している。塗布工程には生産性の低いスピンコーターに換えて独自のスリットコーターを開発し、従来法の2倍のスループットを実現した。
以上のように東レによって開発された高性能カラーフィルターの生産技術は、製品の世界的に強い競争力の源となっており、優れた業績である。
3 将来展望
世界の携帯電話の普及は目覚ましいが、高機能化、携帯情報端末への移行は日本が先行しており、国内市場の拡大に対応して高性能商品に焦点を合わせた製品開発を優位に進めることができる。また、海外市場においても高機能携帯情報端末への転換は時間の問題であり、国内市場で培った本法の技術が世界に展開されることが期待される。