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第54回大河内記念技術賞

青紫色レーザ用窒化ガリウム基板の開発

 

1 開発の背景と内容
次世代型大容量光ディスク記録には青紫色レーザの利用が不可欠であり、そのレーザ動作には欠陥密度の低い高品質窒化ガリウム単結晶基板が必要である。窒化ガリウム単結晶の育成は難しく、サファイア基板上に成長させた窒化ガリウム結晶を用いた研究開発が行われていたが、高密度の結晶欠陥(転位)が存在し結晶の劈開性に劣るため、高品質な青紫色レーザは実現されていなかった。
本業績は、独創的な技術開発により、大口径で低欠陥密度の窒化ガリウム単結晶基板の開発に世界で初めて成功し、工業化を実現したものである。

 

2 特徴と成果
1) 異種基板上に気相合成法により窒化ガリウムを成長させ、その後に基板を除去するという独自の製造プロセスを開発した。また、結晶成長の最表面に窪みを形成して成長を進めることにより結晶欠陥を集中させ、その周囲の欠陥濃度を著しく低減できる技術を開発した。
2) さらに溝状の窪みを形成して低欠陥濃度領域を制御する技術も開発した。これらにより欠陥密度が105cm-2以下で良好な劈開性を有する大口径(2インチ径)の単結晶基板の開発に成功した。同時に量産化技術の開発を進め、2003年には量産プロセスの構築に成功している。
3) その結果、2004年から現在まで国内外の市場占有率が95%に至る優れた生産実績を達成している。
本業績の窒化ガリウム単結晶基板を使った高出力、長寿命の青紫色レーザ素子がレーザデバイスメーカーにより製造され、次世代型DVD等の中核部品となっていることから、本業績は光記録分野の産業の発展にも大きく貢献している。

 

3 将来展望
光ディスク用青紫色レーザは、ビデオやゲーム用途に加えパソコン記録、さらにはディスプレイ用途にも利用が拡大すると予想され、窒化ガリウム基板の需要はさらに大きくなると考えられる。また、青紫色レーザ素子の高出力化、長寿命化の要求も高まるが、欠陥密度低減技術の適用によりその対応が可能と考えられる。
本業績は、大きな発展が期待される光記録分野・レーザ応用分野の産業基盤を支える、重要かつ波及性の高い生産技術といえる。