第54回大河内記念生産賞
液晶ディスプレイバックライト用
高性能反射ポリエステルフィルムの開発
1 開発の背景と内容
液晶ディスプレイ実用化のためには、明るさや画質等の基本性能を飛躍的に向上させる高性能バックライトが不可欠であった。本技術開発では、独自のポリマーアロイ分散技術と高精度フィルム延伸技術を統合し、多数の独立微小気泡を内包する低比重二軸延伸ポリエステルフィルムを開発し、その気固界面の多重反射によって高反射率で色むらのない高性能液晶ディスプレイバックライト用反射フィルムの量産化を達成した。この技術開発の成果を取り入れた高性能液晶ディスプレイは、旧来のブラウン管に代わってモニター・テレビ等の標準的ディスプレイとなりつつある。
2 特徴と成果
1) ポリマーフィルム素材としての優れた基本特性を持つポリエステルに着目し、これと非相溶なポリオレフィン系ポリマーを均一分散させ、さらに逐次、二軸延伸によって両ポリマー成分界面を剥離させて独立微小気泡を形成するという独自の新技術によって、低比重で光損失の少ない気泡含有ポリエステルフィルムの創出に世界で初めて成功し、液晶バックライトの性能を著しく向上させた。
2) さらにこの気泡含有二軸延伸ポリエステル反射フィルムの量産化を、ポリマーアロイフィルムの高精度延伸技術の確立によって達成した。その主要プロセスは、
1 ポリマーアロイの配合技術、 2 薄膜積層技術、
3 フィルムの縦延伸および横延伸による気泡形成技術、
4 フィルム厚制御技術、 5 フィルム破断防止技術、
6 フィルム品質管理技術、 7 フィルム屑再利用技術等
から構成され、この生産技術によるバックライト用反射フィルムの生産は、4600トン/年(2006年度)に達し、ライセンス先での生産と合わせて国内外ともに市場をほぼ独占している。
3 将来展望
本技術は、高性能液晶ディスプレイバックライト用反射フィルムを独自に開発したもので、さらに成長が期待される液晶ディスプレイ産業に直接貢献する優れた業績である。また、本技術は、これまで蓄積されてきた高度なポリエステルフィルム製造技術を基盤とする高機能フィルム製造の成功例であり、また他のポリマーアロイ系高機能フィルム製造にも応用できるものと期待される。