第54回大河内記念賞
内部循環型流動層技術の開発
1 開発の背景と内容
廃棄物の焼却処理への流動層利用が検討され始めた当初は、従来のバブリング型流動層では、大型重量物に起因する種々の問題のため、燃焼物の粉砕等の前処理が不可欠であったばかりでなく、装置そのものの大型化・大容量化が全く困難であった。本技術では、流動媒体である砂の横方向流動を活用した内部循環流動層という斬新な独自技術開発により、都市ごみのみならず一般廃棄物・産業廃棄物に対しても、無破砕・大型化を初めて実現した。本技術では、燃焼部と伝熱部の分離、燃焼室とガス化室の分離などが可能となり、この大きな特徴を生かして、内部循環型流動層燃焼炉のみならず、内部循環型流動層ボイラ、内部循環型ガス化溶融炉、内部循環型ケミカルリサイクル用ガス化炉へと発展させてきている。
2 特徴と成果
1) 内部循環流動層の開発により、ボイラでは、層内伝熱管磨耗の問題を解決するとともに、層温制御および負荷変動制御を可能とした。さらに、ガス化溶融炉では、ダイオキシンの高温分解、灰の自己熱溶融固化、低融点金属対策、有価金属の分離回収をも実現し、産業廃棄物のガス化溶融炉としては画期的な20%という高い発電効率を達成している。かつて国内および国外(欧州)のガス化溶融炉先行事例においては、トラブルが続出して開発を断念していた。
2) 本技術の内部循環流動層型の適用によって、初めてこれらの困難を克服できたものである。すでに多数の実機導入実績があり、プラント建設(技術供与先を含まず)とOM(Operation & Maintenance)でそれぞれ数千億円規模の受注額に達している。本技術は、世界に誇る我が国独自の環境適合型技術である。
3) 東京都が推進する「スーパーエコタウン事業」の目玉として平成18年より営業運転を開始した東京臨海リサイクルパワー㈱の内部循環型ガス化溶融炉を核としたプラントでは、各種の産業廃棄物および建築廃材(500 ton/day)が、ほぼ中間処理場から持ち込まれた性状のままガス化炉に投入され、電力(東電に売電)、スラグ(建築資材会社へ売却)、鉄・アルミ(金属卸売会社へ売却)に変換されるエネルギーリサイクルとマテリアルリサイクルが実現している。
3 将来展望
本技術の環境保全、省エネ、リサイクルなどへの寄与は実証済であるが、本技術の特徴を生かして、例えばバイオマスや廃プラなどから原料用化学物質を生産するケミカルリサイクルなど、まだまだ発展のバリエーションが拡がる可能性を秘めている。