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第55回大河内記念生産賞

知能ロボットセルで構成された高度自動化モータ組立工場の実現

 

1 開発の背景と内容
数値制御工作機械において、高性能サーボモータ・スピンドルモータは重要な要素機能部品である。ファナックは、これらのモータの全量を国内で生産し、これらを含む数値制御システムにおいて全世界で約50%と推定される高いシェアを有している。国外の安価な労働力に頼ることなく継続的に競争力を保つためには、サーボモータ・スピンドルモータの組立において、高度な生産自動化による高品質・低コストな生産方式が改めて要求されるようになってきた。本業績は、長年ファナック社内で開発されてきた知能ロボット技術、自動組立技術、オフラインプログラミング技術などを総合して、2,000種類のモータに対応して、月産15万台以上の生産能力を有し安定に無人稼動する高度自動化モータ組立工場を構築したものである。

 

2 特徴と成果
モータ組立において品質・コスト競争力を持つシステムを実現するために、設備コストの削減、人手の削減、無人稼働時間の延長を徹底的に追求し、次のような組立自動化技術を開発した。
(1) まず、モータの設計や組立工程を標準化して、まとまった工程ごとに組立セルを構成した。
(2) セル内の作業ロボットとして、目と手の感覚をもつ知能ロボットを多数採用し、部品の位置決め誤差などに柔軟に対応できるようにして困難な組立の自動化を可能とした。
(3) これにより、部品供給や冶具などの周辺装置が安価な設備ですむようになった。知能ロボット自体も標準化により頑健・安価なものとなった。
(4) このような知能ロボットセルに、長年蓄積してきたモータ組立の自動化技術を融合させて、柔軟性に富んで低コストな高度自動化を達成した。
(5) 工場全体は、100ほどの自律的な知能ロボットセルにより実現された。併せて、知能ロボットセルを最大限に活用するための、工場内物流システムおよび生産管理システムも分散型システムとして新たに構築された。
本業績の組立工場は円滑に操業し、高い稼働率を達成している。対象となるモータの全量を国内で生産し、2006年以来すでに200万台の生産実績がある。従来型ロボットによる自動化に比べて、組立コストを大幅に削減した。

 

3 将来展望
本業績は、モータ組立以外の多くの製造工程への展開が期待される。また、海外の発展途上地域などに対抗して、国内にものづくり産業を維持・発展させるための一つの方向を示すものとして、他製造業の競争力強化への波及効果が期待される。