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第56回大河内記念技術賞

高性能結晶性シリコンTFTを用いた
周辺回路一体化液晶パネルの開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
液晶産業の国際競争力強化に従来と一線を画す技術・製品が求められていた。本業績のガラス上に周辺回路を一体形成した液晶パネル(システム液晶)製品は、高性能モバイル機器を普及させることによってユビキタス・ネットワークの創造・充実・拡大に大きく貢献している。この製品は、優れた特性のTFT(薄膜トランジスター)を高い生産性で製造できるプロセス技術の開発によって誕生した。

 

2 特徴と成果
本業績の開発には次の3つの際立った特徴がある。
(1) 第一に固相結晶化における触媒効果を発見して開発を始めたこと(1993年)。
(2) 第二に触媒ゲッタリング技術を開発して問題を克服し、従来のアモルファスシリコンの最大600倍、従来の低温ポリシリコンの最大6倍の高移動度を誇る高性能結晶性シリコン(CGシリコン)を開発し、TFTによる高速動作回路を実現したこと。
(3) 第三にCGシリコンの製造プロセスを量産に対応させ、部品点数削減による低コスト、高信頼性、小型軽量化を可能にするシステム液晶製品を生み出したことである。
2002年にシステム液晶の量産化を果たし、2003年には世界市場でトップシェアを獲得した。以降、2008年まで金額ベースで年平均伸長率約24%と堅調に事業を拡大し、トップシェアを維持している。発見・開発・実用化からトップシェア獲得に至る経緯は、技術マネジメントの手本と言うことができる。

 

3 将来展望
携帯、スマートフォン、ゲーム、デジカメに用いる高精細・高速システム液晶ではCGシリコン技術が今後さらに強みを発揮すると予測され、CGシリコン技術により液晶産業における日本の優位性確保が期待できる。CGシリコン技術によりガラス基板上でCPU(中央演算処理装置)が動作しており、シートコンピュータやシートテレビが出現する可能性が増している。