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第56回大河内記念生産特賞

高機能造管成形機の開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
帯状の板材を曲げて筒状とし溶接により鋼管とした電縫管は世界中で広く使用されている。この電縫管を成形する装置の中核部分となるのはロールを用いて板を曲げるロール成形過程である。従来、多段の成形パスを通して素材である板を全体的に少しずつ変形させ、所望の管形状に到達させるサーキュラーベンド方式が用いられていた。しかし、この方法では弾性復元の影響を受けやすく、製品の品質向上には限度があった。また、一般的に異なる板厚や管径に対してはロールを交換する必要があるために多数のロールを準備しなければならず、ロール交換にも多大な時間と労力を必要とした。対策としてロールの交換ではなく位置を変更することで対処するフレキシブルロール成形法も行われるようになったが、その変更調整には多くの困難を伴った。

 

2 特徴と成果
本業績においては、一般に市販されているFEM(有限要素法プログラム)とは異なる、ロール成形に特化した独自の変形シミュレータを開発し、ロール加圧による材料変形を精度良く予測することに成功した。
(1) これにより、サーキュラーベンド方式に比べ弾性復元の影響を格段に少なくできるプレスベンド方式による成形プロセスの実用化に成功した。
(2) また、製品品質に大きく影響する素材辺縁部から順次中央に向けて曲率が変化する曲面ロールを用いたプレスベンド、素材中央部はフリーベンドを適用し、少ない段数で、かつ高精度に変形させる全体プロセスを確立した。
(3) さらに、シミュレーションによって素材の変形を迅速かつ正確に予測することができるため、広範囲の管径に対してロール位置の自動設定が可能なフレキシブルロール成形装置に発展させた。
その結果、全く同一のロールでも数倍の管径変更に対して自動的に位置・姿勢が変更されて、直ちに所望の管の成形を行えるようになった。また、変形シミュレーションの際に対象となる素材の物性値を採用することで、材質の変更にも広範囲に適応できる。
以上の成果は省スペース、フレキシブル、かつ高性能な電縫管成形装置を提供するのみならず、管製品の品質向上にも大きく資するものである。

 

3 将来展望
本業績は経済性の点でも、製品品質の点でも従来の電縫管成形方式に比べ優れている。また、多品種の製管受注にも柔軟に対応できるところから、今後さらに重要性が増すものと考えられる。既に国内のみならず、諸外国において設置が進んでおり、我が国の技術立国への大きな寄与が期待される。