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第57回大河内記念生産賞

エアレーション造型法の開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
素形材製造法としての鋳造は、複雑な形状を一括して安価に製造できる手段として機械製品の製造にとって重要である。従来の鋳造設備には粉塵・騒音・高温などの悪環境性やエネルギー浪費などの課題があった。また、我が国の機械製造業にとって造型精度の向上によるニアネットシェープ化など付加価値の高い鋳造技術を国内に維持することは重要であり、そのための鋳造技術の革新が望まれていた。
本業績は、高圧空気や振動衝撃を利用する従来の造型機に代わり、エアレーション造型法という基礎技術により、造型プロセスの環境改善、造型装置の効率化・小型化、造型精度の向上を実現したものである。従来機と比較して、造型プロセスの消費エネルギーを1/3に、装置容積を1/8に削減することができ、造型精度向上により、製品の薄肉化、重量低減、追加加工工数低減、コスト低減を実現できた。

 

2 特徴と成果
エアレーションとは、砂に低圧圧縮空気を吹き込むことで砂の流動性を高め模型形状への砂の充填性を高めるものである。本業績では、造型機の砂タンク内壁からの空気の吹き込み方式を新たに考案し、理論解析に基づき様々な工夫を凝らして独創的な砂入れ方式を実現している。模型形状精度を保ったまま細部形状への砂の充填性を高め、付加価値の高い造型を可能とした。エアレーションを効果的に適用できるように新たな装置構造を開発し、砂型枠内圧力制御、鋳型高さフィードバック制御、スクイズ反力制御、重心ガイド機構等の要素技術を総合して、造型精度が高く効率のよい全自動化造型機を開発した。
エアレーション造型法について関連する特許が確立しており、本業績による自動造型機の日本国内での市場占有率は50%を超え、世界でも30%に近い。研究機関との共同研究も積極的に行って成果を公表しており、学協会からの受賞も多い。本業績による枠付造型機や抜枠造型機を起点として、清浄な環境で効率よく稼働する自動化鋳造ラインが構築されており、自動車や産業機械のためのコスト競争力のある鋳造部品生産を実現している。

 

3 将来展望
本業績は、鋳物という基本的な素形材の砂型製造設備に関するものであり、グローバル化の時代にあって国内に先端的なものづくり基盤を維持するために意義深い業績である。国際的な競争力を有する技術であり、海外市場での今後の更なる展開も期待される。