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第57回大河内記念生産賞

高画質裏面照射型CMOSイメージセンサの開発と量産化

 

1 開発の背景と内容
半導体イメージセンサは、デジタル静止カメラ、デジタル動画カメラへの搭載はもとより、多くの産業分野で利用が進むと共に、携帯電話への搭載にまで進んでいる。結果として、従来にも増して、小型化、高画質・高精細化が要求されている。反面、素子の高感度化と小型化・多画素化(高分解能)は対立関係にある。同じサイズのセンサであれば、画素数を増加させると1画素(ピクセル)あたりの面積が減少し、光感度も悪くなる。
半導体素子は、通常、光露光面側に電極や配線を設けるため、光が電気信号に変わる部分に当たる面積が大きく減少する。この対策として、電極や配線がない裏面から光を照射する方式が以前より考えられていたが、裏面照射型特有の構造や工程に起因したノイズ、暗電流、欠陥画素、混色など、イメージセンサの画質低下につながる課題が発生し、実用には至っていなかった。
こうした背景から、ソニーでは、生産性を含めて高性能を保ったまま安定、かつ、高性能な裏面照射型CMOSイメージセンサの量産可能な製造技術を開発し、多くの製造実績を上げている。

 

2 特徴と成果
ソニーでは、厚さ数μmのシリコン基板にCMOSイメージセンサを構成することで、感度と分解能を高めることに成功した。そのために開発したキー技術は、
(1) プロセス最適化による基板歪みの最小化、
(2) シリコン界面の特殊処理による雑音の低減、などである。
裏面照射型CMOSイメージセンサに最適なフォトダイオードの設計も含めた結果、従来品と比較するとほぼ2倍の高感度化と高画質化を実現し、更に、高歩留まりを得ることに成功している。

 

3 将来展望
本技術によって製作された裏面照射型CMOSイメージセンサは、既に、各社のカメラに高感度を売り物にして搭載されており、その市場評価は極めて高い。また、今後は、更に、小型かつ高画質化を目指し、携帯電話にも搭載予定があるなど、今後ますます大きな市場を開拓していくものと予想される。