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第58回大河内記念生産特賞

同時多段プレス技術による自動車部品生産の高効率化

 

1 開発の背景と内容
国内生産の国際的競争力を維持するためには、多品種生産における生産コストの低減を図る生産システムを構築することが求められている。価格競争の厳しい業界である自動車部品業界において、複数の金型を縦に重ねることを特徴とする同時多段プレス技術を独自に開発し、プレス成形技術と射出成形技術の融合化を図るなど多くの革新的な技術を考案することにより、種々の自動車部品加工に同時多段プレス技術を展開し、生産設備の小型化と中間在庫の低減などにより、大幅なコスト低減に成功し、経済性に優れた生産技術を構築したのが本業績の内容である。

 

2 特徴と成果
複数の金型を工程順に横に並べ、プレス機を用いて生産する方法は、大量生産に適しているが、各金型での加工に必要な力の和を満たす大きな出力のプレス機を用いる必要があった。これに対し、本業績の同時多段プレス技術では、金型を縦に重ねることにより、プレスに必要とする力を大幅に小さくすることができ、設備の小型化を可能とした。同時多段プレスでは、力を小さくできる一方、プレスのストロークは大きくする必要があり、この目的に適合した油圧プレス(提灯プレス)を独自技術で開発した。1998年に小物部品加工への検討から始まった本業績の技術開発は、複雑かつ大型部品加工への展開、金型交換時間を大幅に短縮化したリボルバー式同時多段プレス、プレス加工と樹脂成形の同時複合加工を可能としたハイブリッド成形技術、射出成形の多段化などへ、大きく発展し、提灯プレスから提灯インジェクションまで、社内だけでも2000例を越える実績を有し、自動車部品の低価格化に大きな貢献をしている。

 

3 将来展望
本業績の技術は、主として自動車部品生産において実績を有し、既にその優秀性が認められている。現在は主要取引先に限定されているが、他社での利用が増加しており、今後は、徐々に、自動車部品業界全体に広く普及するものと思われる。さらに、本業績の技術は、プレス成形と射出成形さらには組み立てまでも融合化した先進的な部品加工技術に繋がることから、自動車部品だけでなく、他の機械部品の生産技術としても活用されることが期待できる。