第58回大河内記念生産賞
コークス炉化学原料化法による
一般廃プラスチックの再資源化技術
1 開発の背景と内容
資源循環型社会の構築が求められる中、一般家庭から排出されるプラスチックの7割を占める容器包装プラスチックは、その大部分が焼却や埋め立て処分されており、その有効活用が課題である。ケミカルリサイクルの方法として、油化、ガス化、高炉法などがあるが、容器包装プラスチックはポリ塩化ビニル由来の塩素を数%含んでいることから、設備腐食防止のため、異物除去工程に脱塩素工程が必要であり、リサイクル率が低く、処理コストが高いという課題があった。本プロセスは、塩素を含む容器包装プラスチックを事前の脱塩素工程無しで製鉄用コークス炉に装入・熱分解し、得られたコークス・油分・ガスを全量有効利用することを可能としたものであり、追加の後処理工程も不要であるなどリサイクル率や経済性に優れている。コークス炉に投入された容器包装プラスチックのうち約40%が炭化水素油として新たなプラスチックの原料に、約20%がコークスとして製鉄原料に、約40%がコークス炉ガスとして高効率発電や水素原料に使用されている。
2 特徴と成果
本プロセスは、プラスチックが石炭と同様な組成を持つ有機物であることに着目し、既存の製鉄用コークス炉を熱分解炉として最大限活用するアイデアを基に開発された。廃プラスチック中の塩素成分が配管や耐火物等の設備系に及ぼす悪影響が懸念されたが、廃プラスチックの熱分解挙動や塩素挙動を詳細に追跡して分析した結果、(1)廃プラスチックの熱分解は石炭より低温側で完了すること、(2)石炭との共存下では廃プラスチック中の塩素起因の塩化水素は、石炭中の窒素起因のアンモニアとの反応により塩化アンモニウムとして無害化されること、を見出した。また、一定量以上の廃プラスチック添加によりコークス品質が低下することがあるが、このメカニズムを解明し、コークス品質低下を抑制する「廃プラスチックの事前処理技術及び添加量に関する操業指針を明らかにした。平成11年度に容器包装リサイクル法の技術認定を受けたあと、平成12年度の事業開始以降、順調に処理実績を伸ばし、平成22年、23年には約20万トン(容器包装プラスチック全体の30%、ケミカルリサイクル法の64%と国内最大のシェア)を受注し、累計で約150万トンのリサイクル実績を持つ。この処理量は、原油削減量換算で約120トン、CO2削減効果で約480万トンに相当する。稼働以降約11年間、塩素起因の生成物品質トラブルや設備トラブルは発生しておらず、安定稼働中である。
3 将来展望
リサイクル率や経済性に優れる本手法は、省資源・省CO2に繋がるプラスチック再資源化の重要な技術であり、国内外への展開が期待できる。新日鐵のオリジナル技術であり、日本全国に配置された5カ所のコークス炉で実施中のほか、既に国内鉄鋼各社へ適用が広がっている。また、海外の鉄鋼メーカー等でも活用が検討されている。