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第58回大河内記念生産賞

超高精細反射型液晶ディスプレイデバイスを使った
4Kデジタルシネマ投影機の実用化

 

1 開発の背景と内容
くからの大衆娯楽の一つである映画は、画質の経年劣化が避けられない従来のフイルム方式から、画質の不変性が保証されるデジタル方式へと急速に変わりつつある。ここで今まで主流となっていたのは、2K規格と呼ばれる2048×1080画素の解像度技術であったが、大スクリーンでは画素の粗さがメッシュ感として知覚されるため、より解像度の高い4K規格(4096×2160画素)の実現が望まれていた。この要望にこたえて、世界に先駆けて4K規格のデジタルシネマシステムを実用化したのが、本業績である。

 

2 特徴と成果
従来の4倍の解像度を達成した本業績を支える主な技術は、ディスプレイデバイス技術と投影機組立技術の二つである。ディスプレイデバイスにおいては、反射型液晶ディスプレイ方式を採用し、つぎの3つの改良を総合して高精細を達成している。第1に、独自のウエハ一括製造技術によるスペーサレス化で,コントラストと応答速度を改善し。第2に、画素駆動用トランジスタの画素電極下配置による画素間狭幅化で,メッシュ感を低減してなめらかな画面表示を達成した。第3に、画面の分割駆動によるデータ転送速度の低減で、ノイズによる映像の乱れを防止した。一方、投影機組立技術においては、精密なプリズムシステムの研磨、洗浄、組立、検査技術を確立た。その結果、4K規格を満たす超高精細反射型ディスプレイデバイスを世界に先駆けて開発し、それを搭載したデジタルシネマ投影機を生産して、これまでの6年間にわたって、他社の追随を許していない。2011年現在,本業績のシネマシステムが、4K規格の唯一の商品であり、世界で1万スクリーンに採用されている。

 

3 将来展望
デジタル技術の高操作性,画質不変性を考えるとき、シネマスクリーンのデジタル方式への切り替えがさらに進むことは必然であり、また、メッシュ感のない滑らかな画像が望まれることもエンタテインメント分野の必然であろう。これらの観点から、4K規格の高精細シネマスクリーン投影機は、さらに市場を広げることが予想され、本業績は国内国外を問わず、今後さらに普及の速度を上げていくと考えられる。また、シネマスクリーン以外にも、人工現実感、運転シミュレータ、エンタテインメントなど、高精細大画面表示が望まれる分野は、今後多様に開拓されると予想され、本業績の新しい適用分野も広がると考えられる。