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第58回大河内記念生産賞

DVD/CDドライブ用モノリシック二波長高出力レーザの
開発と実用化

 

1 開発の背景と内容
記録可能DVDドライブには、DVD読出し・記録に赤色半導体レーザを用いるのと、同時に、CD読出し・記録に赤外半導体レーザも実装する必要がある。光ピックアップの小型化・薄型化には、光学系の集約が必要不可欠である。両レーザのワンチップ化は、このために極めて有効で、信頼性の向上、更にはコストダウンにもつながるものとなる。この目的で、赤色半導体レーザと赤外半導体レーザを構成・製造プロセスの全てを見直し、高効率かつ大出力で信頼性の高いモノリシック二波長高出力半導体レーザを大量生産する技術を開発した。

 

2 特徴と成果
上記目的で、多くの技術を開発、発展させている。主要な3点を挙げると、①半導体レーザの構成を再検討し、基板のGaAsを除き、ヒ素の使用を極限まで減らした構造で赤外半導体レーザと赤色半導体レーザを連続するプロセスで作り上げる技術を確立した。これらの工程見直しの結果、主要工程数を9から6に削減している。熱処理においても、最後の熱処理で全ての半導体結晶化・不純物濃度分布が最適となるように制御している。結果として、信頼性向上とコスト低減が実現できた。②機械的な加工性に優れたドライエッチと界面特性に優れたウェットエッチを組み合わせる際に、誘電体薄膜を側面にコートすることにより回り込みエッチを防ぐことで、界面特性にも優れた状態を保ったまま、発光効率の良い垂直リッジ構造の作成に成功し、③テーパ構造による導波路の光損失の低減、2つのレーザで異なる端面加工を施す工夫による端面損傷の低減など様々な工夫により、大出力省エネ(高効率)二波長レーザをワンチップ上に実現している。更に、装置の汚染対策など多くの細かい技術の積み上げにより、無駄を省くと共に装置の稼働率を上げることにより、低コストにおいて高性能半導体レーザの作成に成功している。高いレベルでのウェーハ歩留まりが維持されており、結果として、低価格化と高性能とを両立させ、現在、圧倒的なお客様の支持を得ている。

 

3 将来展望
DVD用二波長半導体レーザとしての課題は、更なる信頼性の向上とコスト低減である。常に製造過程の見直しにより信頼性向上とコスト低減の努力を継続しており、今後も光ディスクドライブ市場の成長に貢献することが期待される。また、近年、光ディスク以外にもレーザを応用した製品が研究開発されており、培われてきた低消費電力化の技術、高信頼性半導体レーザの大量生産技術は、今後さらなる量産化につながる技術であると期待される。