第58回大河内記念賞
大画面液晶テレビ向け高品質偏光板保護フィルムの
高効率溶液製膜技術
1 開発の背景と内容
世界的に需要が急増する液晶ディスプレイ(LCD)には偏光板保護フィルムが不可欠である。同社は写真感光材料用フィルムに活用されたトリアセチルセルロースを材料にした溶液製膜法を偏光板保護フィルムに転用したが、写真感光材料フィルムを遙かに上回る高品質、高生産性、環境負荷軽減の課題に遭遇した。これを独自技術の開発により解決した。この高品質と超幅広化の偏光板保護フィルムは大画面化する液晶テレビの世界的普及に大きく貢献している。
2 特徴と成果
このような偏光板保護フィルムを可能にしたコア技術は共流延技術、液膜振動制御技術、光軸配向制御技術、環境負荷低減技術である。共流延技術は微少なフィルム表面凹凸発生挙動を解明し、フィルム平面性と高速生産性を実現した。次に液膜振動制御技術により液膜の加振要因が低減し、段ムラが解消した。さらに光軸配向制御技術は光軸配向を低減した。また環境負荷低減技術により業界最高水準の溶剤リサイクル率99.91%という高度リサイクルシステムを実用化した。これらの技術により、フィルムの平面性、均一性などの高品質を達成し、従来速度の2倍の生産速度、2.3mの超広幅化(従来の1.5倍)という業界最高レベルを実現した。同社の偏光板保護フィルムの生産能力は2011年度には710百万m2に達し、世界シェアNo.1(7割強)という大きな成果をもたらした。
3 将来展望
同社が開発した上記の生産技術は今後も世界の液晶テレビ市場を支えるが、共流延技術を応用した高機能偏光板保護フィルムやLCD用以外の高機能材料の開発が期待される。また本生産はすべて国内でなされているため国内産業の空洞化を防止しており、今後の日本の高度ものづくりのあり方を示唆している。