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第59回大河内記念技術賞

汎発性血管内血液凝固症治療薬
遺伝子組換え型トロンボモジュリンの開発

 

1 開発の背景と内容
汎発性血管内血液凝固症(DIC)は重篤な血液疾患であるが、既存の治療薬には出血という副作用の問題があった。一方、トロンボモジュリン(TM)が血液凝固系の制御を司ることは明らかにされていたが、血管内皮細胞の膜タンパク質であるTMそのものを医薬品に応用することは困難と考えられていた。このような背景のもと、安定的に大量供給が可能な遺伝子組換え型TMのDIC治療薬としての開発を発想した。
世界に先駆けヒトTMの遺伝子クローニングに成功し、遺伝子組換え型TMを創製した。また、先進的な灌流培養技術を確立し、工業化スケールでの遺伝子組換え型TM原体の製造を可能とした。そして、独創的な製剤技術を開発するとともに、薬理作用定量方法の確立と標準化を行った。さらに、臨床治験を実施し、世界初の遺伝子組換え型TM製剤としての実用化に至った。

 

2 特徴と成果
TMを医薬品として応用するために、世界に先駆けヒトTMの遺伝子クローニングを行った。また、水に不溶性の膜タンパク質であるTMの細胞外ドメインのみを発現するという独自の発想に基づき、水溶性でかつTM全長と同等の活性をもつ遺伝子組換え型TMを創製した。さらに、遺伝子組換え型TMの大量生産技術および製剤技術の開発にも見るべきものが多い。加えて、TM薬理作用の活性単位の標準化は国際単位への展開が期待され、特筆すべき副次的業績と考える。
TM遺伝子を導入したチャイニーズハムスター卵巣細胞の培養から遺伝子組換え型TM原体の精製までを国内自社工場内で行っている。2008年より販売を開始し、2012年度の販売実績は110億円(薬価ベース)/年を予定している。
遺伝子組換え型TM製剤の医薬品としての実用化は世界初かつ唯一のものである。また、遺伝子クローニングから医薬品としての開発、さらには生産までの全てが日本国内で行われた稀有な成功例である。

 

3 将来展望
米国・欧州を初めとする海外において臨床治験(フェーズ III)が始まっており、世界展開も目前の状況にある。このように、今後さらなる市場拡大が見込まれることから生産設備の増設を検討している。