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第59回大河内記念生産賞

石炭資源拡大を可能とする省エネルギー型コークス製造技術

 

1 開発の背景と内容
エネルギー源として使われる石炭は石油とは異なり、多くの場合生産国でそのまま使われている。しかし、コークス原料である原料炭と呼ばれる粘結性を有する石炭は我が国、中国などは大量に輸入している。日本鉄鋼連盟に参加する企業群が行った国家プロジェクトSCOPE21の成果について、鉄鋼5社と化学会社一社により共同申請がなされた。
製鉄で使われるコークスは、還元剤としての機能に加え、溶鉱炉内で高温での通気性を保つ機能を担っているため、鉄鉱石の重さに耐える高温強度が必要である。そのためにコークス製造用原料炭には品質の高いものが要求されるが、高品位炭の資源量、生産量は限られ、価格は相対的に高い。
また、生産性の向上は採算性に、コークス炉での処理時に発生するNOxの低減は環境対策上きわめて重要な因子を持っている。前者はプラントの面積がコンパクトになることに加え1.6倍の生産性を確保できた。後者については半減することができている。
製鉄産業の国際競争力を確保するためには、原料の多様性を高め、原料を安価に安定的に確保することが必要である。そのためには、安価な低品位炭の利用を極限まで高めつつも、性能の高いコークスを製造する技術を開発しなければならない。本技術はこれに成功し、製鉄業の競争力を確保するものである。

 

2 特徴と成果
粘結性の低い低品位炭の混合率を上げると、製品コークスの強度は下がる。しかし、コークス強度の発現メカニズムの研究と、石炭の事前熱処理のシミュレーションを組み合わせて検討した結果、解決策を見いだした。つまり原料炭を微粉炭と粗粒炭に分級し、微粉炭部分を熱間成型した後に高速昇温処理をした粗粒とともにコークス炉に装入すると製品コークスの強度は低品位炭の使用比率をあげても必要な数値を確保できることがわかった。
2008年、新日鐵住金㈱大分製鉄所が世界で初めて新型コークス製造方式のコークス炉を導入し、年産70万トン強の生産を3年続け、安定的に低品位炭の使用比率を57%程度まで上昇することができている。

 

3 将来展望
現在、新日鐵住金㈱名古屋製鉄所での新型コークス製造方式のプラントを建設中である。