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第59回大河内記念生産賞

天然ガスの大幅増産を実現させる
高合金油井管および製造技術の開発

 

1 開発の背景と内容
中国やインド等、新興国の経済活動の活発化に伴うエネルギー需要の拡大に対応するために天然ガス増産の要望が近年高まっている。天然ガスは高温・高圧の厳しい腐食環境下に存在する場合が多く、その採掘にはCrやNiを多く含有する高合金油井管が用いられる。このような過酷な環境で天然ガスを増産するためには大量の高合金油井管が必要であり、また経済性の観点から生産性の向上に寄与する新製品とその製造技術も求められる。さらに従来未開発の大深度ガス田(深度~10,000m)開発に必要な超高圧・高温の環境においても使用可能な、高い強度と耐腐食性を兼ね備えた新しい製品の開発も求められている。
本業績は、1)中小径(直径18cm以下)高合金油井管の量産技術開発、2)大径(直径18cm超)長尺高合金油井管の製造技術開発、そして3)超高圧・高温環境の大深度ガス田開発用超高強度高合金油井管(降伏強度1000MPa級)の材料設計と製造技術からなる。

 

2 特徴と成果
中小径高合金油井管の量産技術については従来の溶解・インゴット鋳造→鋳片の切断・手入れ→分塊圧延のプロセスを効率化し、連続鋳造により無手入れで分塊圧延に提供出来る高品位の鋳片を製造するために新設計のモールドパウダーによる鋳造時の冷却制御技術等を開発するとともに、熱間押出し製管法における歩留まりと工具コストを削減して年間の製造可能量を従来の3千トンから2万トンに拡大して世界最高の供給能力を実現した。大径長尺高合金油井管の製造技術開発においては、製造可能寸法制約の少ない穿孔圧延技術がこれまで加工時の発熱による溶融割れが起こるために高合金材料には適用できなかった点を克服し、穿孔圧延の3次元数値解析を世界で初めて実用レベルで実現することで加工時の発熱を約30%低減させる圧延条件を見出す等により、量産技術を確立した。メキシコ湾等の大深度ガス田の採掘に必要な超高圧・高温環境下において応力腐食割れを起こさないこれまでにない高強度高合金油井管の開発においては、窒素含有量を高めて高強度化するとともにレアアースメタルの添加により耐腐食性と熱間加工性を向上した新合金を開発し、この材料を用いた油井管を2010年度から出荷するに至っている。

 

3 将来展望
本業績により天然ガス増産に必要な中小径高合金油井管を年間2万トン供給することを可能としたほか大径長尺品及び腐食環境の厳しい大深度ガス田開発用の新規高強度品を開発して世界最先端の技術要求に応えており、素材産業における我が国の国際競争力を維持するために大きな貢献をする優れた業績である。