第59回大河内記念賞
スパイラル自動製管管路更生工法の開発と実用化
1 開発の背景と内容
わが国における下水管路等の埋設管路は戦後急速に整備が進んだが、その老朽化が現在深刻な社会問題となっている。埋設後50年以上を経過したものが1万キロメートル以上、30年以上を経過したものを含めると8万4千キロメートルにおよび、それらの老朽化が起因となって道路陥没等が多発している。下水道は日常生活に欠かせないインフラストラクチャーであり、その使用を中断したり道路を掘り起こしたりすることなく更新することを自治体から強く要望されていた。本業績は、このような背景のもとで、下水管路を供用したままの状況でその内側に新しい管路を布設するという管路更生工法を世界で初めて開発・実用化し、既設管の有効利用により上記の社会的要請に応えたものである。
2 特徴と成果
本工法は、特殊塩化ビニル樹脂の帯状部材で作ったプロファイルを既設管の内側にスパイラル状に布設し、既設管とのすき間に特殊モルタルを詰めることによって管路を再生させる方法である。この工法で使われるプロファイルは、はめ合わせのみで水漏れを完全に防ぐ形状精度が要求され、また、湾曲した管路にも布設できるよう伸縮可能部分を含む不均一厚さの断面構造であることも要求されるが、押出成形のダイ流路形状や制御方式を含む多くの工夫の総合的組合せによってそれに応える性能を達成できる生産技術を開発している。施工においては、ロボットによる管路の劣化状況の自動診断法、人が入れない細い管路での元押式工法と自走式工法を開発し、さらに250ミリメートルの小口径から6000ミリメートルの大口径をカバーする管路、円形以外の断面をもつ管路、湾曲している管路にも使える工法となっている。本工法は、既設管を有効利用でき、地面を掘り起こす必要がなく、下水を流したまま施工できるので、周辺住民や周辺交通への影響を最小限にくい止めることができる。さらに、道路陥没事故の低減、管路の耐震性の向上にも貢献している。国内で既に700キロメートルにこの工法が使われ、施工高で管路更生工法の約30パーセントのシェアを獲得している。海外でのこの工法の実績も、ここ数年急速に伸びてきており、ドイツ、アメリカ合衆国での規格化にも成功している。
3 将来展望
本工法は、劣化管路が今後さらに増え続けるという社会問題の克服に大きく貢献できるものであり、日本発の技術としてよりいっそうの海外展開も期待できる。