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第60回大河内記念技術賞

アルミニウム合金とスチールの摩擦攪拌接合サブフレームの開発

 

1 開発の背景と内容
自動車には地球温暖化対策としてCO2の排出量削減が求められ、車両の軽量化は喫緊の課題である。多くの車体部品の中でフロントサブフレームはサスペンションやエンジンを支持する重要保安部品であり、高い信頼性、剛性が要求されている。と同時に最も大きな重量を有しているためその軽量化効果は大きい。また量産性や低コスト化も求められている。このフロントサブフレームには従来、スチールのアーク溶接が適用されていたが、高信頼性・高剛性と軽量化のためにアルミニウム合金とスチールという異材を摩擦攪拌接合する技術(FSW)を世界で初めて開発した。この摩擦攪拌接合は従来のアーク溶接設備では実現できないため世界初の汎用の産業多関節ロボットなどによる独自の生産設備を開発し、高効率、省スペースかつ製造のエネルギーが低減された生産システムを構築した。

 

2 特徴と成果
このようなフロントサブフレームでのアルミニウム合金とスチールの摩擦攪拌接合は電食による母材腐食が課題とされていたが、これに対し、シール材を事前塗布し、防錆構造を確立した。さらに連続生産する量産技術を多関節ロボットやレーザー・赤外線による高精度の非破壊検査システム、大型製品2個取りアルミダイカスト技術と合わせて世界で初めて開発し、従来品に比べ部品点数は40%削減され、約25%の軽量化、20%の剛性向上と同時に接合時の電気エネルギーの50%低減をもたらした。本技術を適用した生産システムにより2012年後半より米国及び日本で生産・販売し、その数量は増加している。

 

3 将来展望
同社が開発した上記の技術による生産システムは自動車の軽量化、製造エネルギーの低減などを可能にし、世界最大の自動車市場である米国で日産1500台(年産約45万台)の大量生産・出荷を実現している。その後、本技術はすべてアルミニウムの接合にも応用された。今後も自動車産業をはじめ、幅広い分野に適用できる可能性があり、大きな波及効果が期待される。