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第61回大河内記念生産賞

多機能統合型転炉法による製鋼プロセスの開発

 

1 開発の背景と内容
近年、日本の鉄鋼業は、①環境保全ニーズの高まり、②鋼材の高品質化による製品の低燐化、③鉄鉱石等原料の劣質化による溶銑中燐濃度の上昇、④新興国との国際的コスト競争の激化という厳しい環境下に有る。このため製鋼の脱燐処理の高効率化、低コスト化や、高生産対応としてスクラップの多量溶解を可能とする等の課題を解決する新たな製鋼プロセスの開発が求められている。これまで、容量が小さく反応効率の低い溶銑搬送容器(トピードカー)や溶銑鍋を用いた溶銑の予備脱燐処理を行ってきたが、スクラップ多量使用が困難であり、非効率であった。そこで大きな容量を持つ転炉を2基(脱燐炉および脱炭炉)用いる分割炉方式の予備脱燐処理法を開発したが、2基の転炉を装備する必要があり、コスト面での大きな課題があった。本業績は、1基の転炉で溶銑の予備脱燐処理と脱炭処理が実施可能となる画期的な技術開発に関するものであり、上記の課題を抜本的に解決する「多機能転炉法による新たな製鋼プロセスの開発」である。

 

2 特徴と成果
1基の転炉で脱燐、排滓、脱炭を連続して実施可能とするため、①転炉内脱燐反応効率向上、②転炉内スラグフォーミングを用いた転炉傾動排滓技術、③脱炭スラグの次チャージ再利用技術、④高速脱炭・高速排滓等の処理時間短縮技術など、製鋼プロセスを抜本的に改良した技術を開発した。本プロセスを世界に先駆けて確立し、実機の操業に適応し、溶銑予備脱燐処理による低燐鋼の安定製造と汎用鋼のコスト低減を可能とした。本プロセスにより、鋼材の高生産対応力を確保しつつ省エネルギー、低コスト化が可能となった。さらに、低燐鋼種の大量製造が実現したため、高品質な自動車用鋼板や鋼管、厚板などの鋼材の安定提供が可能となった。これらは省エネルギーに大きく寄与する製品となっており、省炭酸ガス等、環境負荷低減の効果を得ている。

 

3 将来展望
新日鉄住金(株)における本プロセスによる処理率は全生産量の5割に達し、従来型の分割炉方式溶銑予備処理を合わせると、溶銑脱燐処理率はほぼ9割に到達しており、鋼材の高品質化に大きく貢献している。本プロセスは国内他社にライセンス供与するとともに海外にも実用化実施済みであり、実施を希望する海外企業はさらに拡大しつつある。