第61回大河内記念生産賞
合わせガラス用遮音中間膜の開発
1 開発の背景と内容
自動車のフロントガラス(合わせガラス)の製造に不可欠なブチラール樹脂中間膜には、当初のガラス飛散を防ぐ安全性の確保に加え、近年は遮音性や遮熱性をはじめ様々な機能付与・高付加価値化が進められている。本開発は、遮音性多層ブチラール中間膜を、自動車ガラス用樹脂の素材設計および製造工程の長期間かつ継続的な技術蓄積をふまえて、世界に先駆けて実用化したもので、グローバル規模で多数の自動車メーカーに採用されている。
2 特徴と成果
本業績は、合わせガラス用の高機能中間膜として、独自に開発した遮音性ブチラール樹脂層含む多層樹脂シートを開発し、さらにその大規模生産を、独自の金型設計に基づく多層ブチラール樹脂シートの一段階押出し成形技術、さらに生産性向上のためにシート両端の再利用工程、ガラスとの接着性を制御し光学性能を実現する表面処理(エンボス工程)、および中間膜シートの熱処理・加湿および巻き取り工程での独自技術に基づいて達成している。本製品は、全世界の全新車販売台数(8,700万台)の30%(推計)に採用され、さらに年率10%超の成長が見込まれている。
3 将来展望
わが国で開発されたポリビニルアルコールを基本素材とする高分子合成・反応・成形加工分野での長期間の技術蓄積をふまえて開発された高機能中間膜は、現在、我が国企業が世界市場の過半を占めるに至った高い生産技術を誇る産業分野である。自動車分野でも今後の成長が期待されるヘッドアップディスプレイ用の高機能中間膜への展開、建築分野を含め他用途への適用も進められ、本技術開発の波及効果は大きい。また我が国が産学連携によりこれまで先導してきた先端高分子材料開発の成功例としても高く評価される。