第61回大河内記念生産賞
厚膜積層型ジルコニアNOxセンサの開発と実用化
1 開発の背景と内容
温室効果ガス(CO2)と窒素酸化物(NOx)の排出同時抑制は、自動車に要求される大きな課題である。CO2排出抑制は空気過剰の希薄燃焼が効果的であるが、逆にNOxの排出が増大する。NOxの効果的な浄化には、NOx濃度に見合った還元剤の注入が効果的であるが、そのためには、NOxの排出量を正確に測定する必要があった。しかも、車載用NOxセンサには、過酷な環境での高精度のNOx検知特性と長期信頼性が要求される。本技術は、ジルコニアの酸素センシング機能を応用した車載用小型NOxセンサを、独自のセラミックス技術を駆使して世界で初めて実用化したものであり、厳しい排ガス規制に対応したクリーンディーゼル車の普及に大きく貢献している。
2 特徴と成果
混合ガスである排気ガス中のNOxを選択的に測定できるセンサ素子構造は連通する2つの空室から構成され、第1室では酸素ポンプ機能を応用して空室内の未燃分と酸素を除去するとともにNOxをNO化し、第2室ではNOを窒素と酸素に分解して酸素濃度を測定することでNOxの高精度測定を可能としている。これを実現するために、熱収縮率を制御したグリーンシート成形と各種部材の印刷、および、巧みに制御された積層と焼成等により、内部空間と電極等異種材料を含む素子構造の高精度な製造・加工法を確立している。特に、厚手の幅広シートの成形技術,異種材料の多数回印刷技術,印刷段差の補償技術,機能の異なる6枚のグリーンシートの積層とひずみのない焼結技術など,多くの優れた独自技術により初めて実用化されたものである。本技術は ISO、JISにも正式登用され、国内外で他の追従を許さない高い市場占有率を得ている。
3 将来展望
この車載用NOxセンサの実用化により、排ガス規制の厳しい日米欧において、燃費に優れCO2とNOxの同時低減が可能なクリーンディーゼル車の世界的普及にすでに大きく貢献しているが、今後は、規制強化が予想される新興国におけるクリーンディーゼル車の普及にも貢献するとともに、さらに車載用以外の用途にも応用展開することが期待される。