第61回大河内記念賞
バリウムフェライト磁性体を用いた大容量データテープカートリッジの量産技術
1 開発の背景と内容
情報通信技術の発展に伴い、世界で生成されるデジタルデータは年率50%以上で増加しており、これを蓄積・保管するストレージデバイスには常にさらなる大容量化が求められている。中でもデータテープは優れた長期保存性能を持ち、ハードディスクドライブに比べて媒体のビット単価、システムのランニングコストが低廉であり、災害対策としてオフサイト保管が可能であることから、主にデータのアーカイブ、バックアップとして使われている。しかし近年、データテープの記録容量の増加率が頭打ちの傾向にあり、これを克服できる新技術が望まれていた。
2 特徴と成果
本業績は、従来の金属微粒子を塗布したテープに代わってバリウムフェライト(BaFe)超微粒子を記録磁性体に用いたテープを作製し、飛躍的に記録密度を高めたものである。本開発においては、超微粒子の製造から液体への分散・塗布・表面平滑化・トラック書き込みとその検証まで、磁気テープの製造に関わる全ての製造工程を新規に見直し、高速で走行するテープ上にnmレベルの精度の塗布層を作製する技術を確立した。これにより、世界最高の10 TB/巻のテープカートリッジの生産を開始するに至った。特に、本業績にかかるテープは、データセンターなどのハイエンド需要家が使用する高性能テープにおいては100 %市場を占有し、デファクトスタンダードとなっている。
3 将来展望
本業績は、金属微粒子を塗布したテープが2009年頃までに実現し近年頭打ち傾向にあった記録密度の増加トレンドを現時点で回復することに成功した。バリウムフェライトの特性をより有効に取り入れる技術的余地があることから、2020年に向けて大容量アーカイビングの需要に応えていくことができると同時に、テープシステムメーカーも本テープを使用する事を前提に開発を行うものと期待される。