お問い合わせ

第62回大河内記念生産特賞

キャスト方式による無接着剤型銅張積層板(2層CCL)および
高生産性プロセスの開発

1 開発の背景と内容
1980年代後半から始まる携帯電子機器市場では、低耐熱性のエポキシ系接着剤で貼り合わせた銅張積層板(3層CCL)が主流の中、軽薄短小化、多層化、微細配線化と環境規制を満足する無接着剤型の銅張積層板(2層CCL)の実用化が切望されていた。本業績は、熱膨張係数を銅と整合させた新規ポリイミドをキャスト法により銅箔上に形成させ、フレキシブル配線板(FPC)用の2層CCLを世界に先駆けて開発・上市したもので、世界に2層CCLの市場を新たに創出した。さらに、生産性が劣り長大装置を要するキャスト法の本質的欠点の克服に取り組み、高機能FPCに求められる寸法安定性、耐熱性、環境調和性と経済性を実現した高効率な2層CCL生産プロセスを完成させた。これにより、FPCの多様な用途展開と使用環境への適応を実現し、特に携帯電話、スマートフォンの世界的な普及に多大の貢献を行った。

 

2 特徴と成果
本業績では、まず高機能FPCフィルムとしての性能と高生産性(速硬化性)を兼ね備えたポリイミドを開発し、前駆体溶液からの乾燥、硬化過程における面内分子配向制御により熱膨張係数を高精度に制御できる技術を確立した。この低熱膨張ポリイミドと銅箔との接着性を高めた高接着性ポリイミドを、硬化後の熱膨張係数が銅と整合するような任意の厚み比で、銅箔上に3層塗工して硬化する手法により、寸法安定性に優れ銅箔接着力の信頼性が高いキャスト法2層CCLを開発することに成功した。さらに、フローティング方式による片面2層CCLの広幅(1000mm)連続塗工・硬化プロセスを開発し、最大1000万㎡/年の生産能力を達成した。また両面CCLの高速・広幅の連続ラミネートプロセスも開発し上市した。2層CCLを開発以来、四半世紀にわたって、世界トップの市場占有率を堅持し、グローバル化した厳しい競争環境下の現在でも、30%以上を占有し続け業界をリードしている。

 

3 将来展望
今後数年間の2層CCLの主要な市場は、スマートフォンと予想される。通信速度の高速化をはじめとするスマートフォンの機能進化に伴って、2層CCLの市場は急激に拡大しており、その販売数量も過去最高の水準を記録しつつある。高速対応の次世代2層CCLの開発においても本技術は優位性を保持しており、ハイエンドスマートフォンに加えて、自動車やウェアラブル機器など、進化し続ける先端デバイスの将来ニーズにも対応して、今後の発展と貢献が期待される。