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第63回大河内記念生産特賞

除草剤フルミオキサジンの開発

 

1 開発の背景と内容
雑草害は農業生産における大きな問題であることから、農薬市場の中で除草剤の占める割合は極めて大きく、約2.5兆円という巨大市場を形成している。1960年以降、種々の土壌処理除草剤が開発されてきたが、薬剤感受性の低い雑草の増加と環境中での除草剤の残留が問題となっていた。それらを背景に、フルミオキサジンが開発された。フルミオキサジンは、住友化学において独自に見出した母核構造を改良、最適化して発明された除草剤であり、本業績はその発見から生産法の開発までを含むものである。

 

2 特徴と成果
研究開発の初期において、高い除草活性を持つN-フェニルイミド系化合物の発見を契機に、ダイズ畑への使用に適した選択性を示す部分構造が見出された。更に丹念な構造修飾を加えて、フルミオキサジンの発明に至った。フルミオキサジンは、その優れた除草活性に加えて、植物界に広く存在するクロロフィルの生合成にかかわるタンパク質を標的とすることや、阻害が拮抗型であることから低感受性の雑草ができにくいという性質を有している。また、土壌への低移行性や短い半減期から、土壌蓄積や後作作物への影響を最小限に抑えることを可能にするものである。合成法の開発過程においては、様々な工夫を加えることにより、高い収率と安全性の両方を満たす生産工程の確立に成功している。現在、フルミオキサジンは全て住友化学大分工場で生産され、日本の農薬で最大規模の輸出額を誇るものである。その生産実績は3億ドルを超えており(2014年度)我が国の経済にも大きな貢献をしている。独自性、社会的影響力、経済効果、将来性の全てについて優れた業績である。

 

3 将来展望
フルミオキサジンの使用は、ダイズ生産国を中心に実績を伸ばしており、その使用は今後も継続的に増大するものと予想される。ブラジル等において除草剤抵抗遺伝子組み換え作物が急速に浸透しつつある状況を踏まえると、より大きな市場規模に成長することが予想される。