第63回大河内記念生産賞
容積とCO2 排出を大幅に削減する塗装ラインの開発
1 開発の背景と内容
近年、自動車製造分野において、製造工場から排出される環境負荷物質の低減として、VOC(揮発性有機物質)やCO2 二酸化炭素)排出量の低減といった環境への取り組みが重要となっている。プレス工程から、ボディ溶接、塗装、部品の組み立てと車両完成にいたるまで工程も多く、環境へのインパクトも大きい。CO2排出量すなわちエネルギー使用量は、自動車製造工程の中で塗装工程が最も多く、塗装工程の省エネ対策が急務の課題となっていた。本業績は、塗装工程のすべてのプロセスにおいて徹底した改善を施すことによって、塗装品質を保証しつつ、塗装ライン容積40%減、CO2 排出量32%減、据付工期50%減、投資額30%減という画期的な塗装ラインを開発したものである。
2 特徴と成果
本技術のポイントは、工程長の短縮、設備高さの低減、付帯設備の小型化を実現した生産技術開発である。内容は、ブースアンダーセクションの低床化、ブース給気室の薄型化、清浄工程の自働化、ロボット加工能力の向上、内板工程の自働化、搬送ピッチの最適化、乾燥炉断面の縮小、小型脱臭装置の有効活用、ブース空調機構成/制御の革新、据付工事期間の半減と工事安全性の向上、品質確認など多岐に渡る。容積削減の最大のポイントは、給気室とアンダーセクションのコンパクト化による塗装ブース自体の大幅な小型化であるが、すべてのプロセスにおいて、塗装前の清浄工程での埃除去掃除機、塗装機、塗装ミスト捕集装置などの要素技術にも、性能向上と省エネに向けた徹底した改善が施されており、トヨタらしい総合力の高さを示す生産技術の革命的成果である。
3 将来展望
本技術はすでに自社内のプリウス生産ラインに実装し、品質不具合、設備不具合も無く順調に生産を続けており、今後、グローバル展開を図っていく計画であり、トヨタ独自の「トヨタ環境チャレンジ2050」への貢献も期待される。