第63回大河内記念生産賞
協働ロボットと人の協働作業による高効率組立システム
1 開発の背景と内容
従来の産業用ロボットは、安全面の配慮からロボットと人を安全柵で完全に分離する必要があり、広い設置スペースと安全柵の導入コストを要した。また、ロボットによる完全自動化が困難で、人手による介入が必要な工程においては、人とロボットの協働作業が不可能なために人手作業の負荷を軽減できず、安全柵による完全分離の条件では高効率な作業は不可能であった。そこで、35kgまでの重量物を搬送でき、しかも安全柵なしで人と協調して安全に作業が可能な協働ロボットを世界で初めて開発し、高効率な組立システムを可能とした。
2 特徴と成果
協働ロボットには、安全機能として、人がロボットのどこに接触しても緊急停止する接触停止、人がアームを押して動かすことができる退避動作、ロボットが固い物体と接触した際の挟み込みを軽減・回避するための反転動作、さらに協働作業を可能とする機能として人手による直接操作が要求される。これらをロボットの基部に設置された1組のセンサによって実現するために、高感度、高分解能、高信頼度のセンサ、信号処理系、ソフトウェアを独自に開発し、可搬質量35kgの協働ロボットとして実現した。また、世界で初めて協働ロボットの安全規格(ISO 10218-1:2011)の認証を取得するにあたり、認証機関と協調して当該規格の認証プロセスの確立にも貢献し、協働ロボットの産業導入に先導的な役割を果たした。
3 将来展望
可搬質量35kg、リーチ1.8mを持つ競合製品は他になく、自動車組立、機械の加工・組立、物流などのさまざまな分野に応用が拡がっている。可搬質量とリーチから見た産業用ロボット市場における本製品の潜在的占有率は自動車組立で90%、工作機械で62%、物流で45%と見積られており、協働作業が必要な場合にはこれらの用途で導入が急速に進むと期待される。また、特に労働人口の減少が予想されるわが国においては、人手作業の負荷軽減による恩恵が期待される。