第64回大河内記念技術賞
高速・高感度フローセル方式免疫分析装置の開発
1 開発の背景と内容
近年、身体の健康状態を把握できる血液検査の重要性が増している。血液検査の一つである免疫分析装置は、タンパク質等の測定対象物の濃度に応じた発光量から対象物を定量化する。検体数、測定項目が多いことから、高速・高感度の装置開発が求められていた。本装置では、測定対象物と発光標識を結合した磁性粒子を含む複合体をセンサ部である免疫測定セルへ送液し、磁石により電極上に捕捉させ、電圧印加に伴う電気化学発光方式により発光量を評価する。送液流路の短縮と送液機構の改良、磁性粒子の挙動解析と測定セル最適設計、試薬交換マネージャの開発等により、高速・高感度免疫分析を実現している。
2 特徴と成果
(i) 検査処理能力向上のため、吸引ノズルを固定化して送液流路のデッドボリュームを大幅に低減することにより、従来比1.75倍の高速化を達成した。(ii) 高感度化のため、磁性粒子の挙動を予測する解析技術開発と最適なセル設計により発光量の増大と信頼性向上を図り、従来比40%増の高感度化を実現した。(iii) 測定中でも試薬交換を可能とする試薬マネージャの開発・設置により、交換操作時間を1/30とし24時間運用を可能とした。これらの成果により、従来装置とほぼ同サイズでありながら、他社ではまだ採用されていないフロー系・電気化学発光検出方式において高速・高感度化を達成した。FDA等の医療機器審査に認可され、2016年の免疫分析市場における世界トップシェアに貢献している。
3 将来展望
高齢化・健康社会に向けて健康状態を迅速・高感度・高信頼度で診断できる血液検査は今後ますます需要の増大が予測される。本装置は、診療時や手術中の治療判断など医療の質の向上にも寄与するものであり、将来さらなるグローバルな展開と社会への貢献が期待できる。