第64回大河内記念生産賞
大容量デジタルコヒーレント光通信システム用高出力・狭線幅・広帯域波長
可変レーザモジュールの開発
1 開発の背景と内容
現代の情報通信社会を支える大容量光通信システムは、最も重要な社会インフラの一つである。急増するトラフィックに対応して、光波長分割多重方式に加えて光デジタルコヒーレント方式の導入が急速に進んでいる。光の位相を利用するコヒーレント光通信においては、発振スペクトルが狭く、かつ広い波長域で波長可変な信号光源が必要とされる。本業績は、高出力かつ狭線幅・広帯域波長可変レーザモジュールを開発し、その大量生産を可能とした技術に関するものである。
2 特徴と成果
古河電工(株)は12本の分布帰還形(DFB)レーザと半導体光増幅器(SOA)をモノリシック集積したデバイスとその制御回路を開発し、上記の諸特性を有するレーザモジュールの量産を実現した。DFBレーザアレイ/SOAへの戻り光抑制による狭線幅化、樹脂接着技術の導入による光チップの小型化、波長と線幅の安定な制御を可能とする小型・高性能外部制御回路の開発などの結果、狭線幅(100 kHz)・広帯域(1530~1625 nm)、小型(37.5 mm×20 mm)の光源パッケージの開発に成功した。量産工程においては、結晶成長反応炉におけるパーティクル制御や微細加工プロセス・バーンイン試験の時間短縮などの生産技術開発に取り組んで歩留まりおよび生産性の向上に成功した。同社のレーザモジュールは2016年の実績で世界シェア1位である。
3 将来展望
情報インフラのキーコンポーネントの開発と製造にかかわる本業績は超大容量光通信の高度化に直接資するものであり、その社会的・経済的意義は極めて大きい。IoTや自動運転などの普及によって情報通信のトラフィックの指数関数的上昇は今後も続くことが予想される。伝送システムの基盤を支えるレーザ光源に対する要求はさらに高度化していくが、同社は継続的な技術開発と生産能力増強によって増大する需要に対応するとしている。本業績は、通信分野の技術発展と市場拡大に継続して貢献していくものと期待される。