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第65回大河内記念技術賞

ハイブリッド自動車用重希土類フリーネオジム磁石および駆動モータの開発

 

1 開発の背景と内容
自動車の保有台数が世界的に急伸する中、二酸化炭素排出量の低減のため、ハイブリッド化、電動化を強力に推進することが猶予なしに求められている。実現に向けての最重要課題は、効率の良い駆動モータの大量生産に上可欠な高性能ネオジム磁石の安定供給であるが、運転時に高温になる駆動モータでは、高温で優れた磁化保持特性を示すジスプロシウムなどの重希土類が大量に添加されている。重希土類は中国に偏在し、レアアースショック後においても世界的に需給が逼迫する中、高効率モータの生産を一段と拡大することに上透明感が出てきており、希少資源の問題の根本的な解消に向け、重希土類を含まない高性能ネオジム磁石の開発と新しい磁石の性能を最大限に活かすための高効率モータの設計技術開発が喫緊の課題となってきた。

 

2 特徴と成果
上記の課題や要求に対し、本業績では、重希土類を含まないHEVモータ用の高耐熱板状ネオジム磁石の熱間成形技術を世界に先駆けて開発した。高温での保磁力を高めるため、ナノ多結晶構造の粗粉末の製造技術と粒界相においてネオジムを高濃度化させる粒界相制御技術を開発し、さらに板厚方向にナノ結晶の磁化容易軸を配向させるため特殊形状の金型を用いて平板の強加工を行う連続熱間押出しプロセスを実現した。本装置は非常にコンパクトにまとめられ、高スループットの効率的な生産が行われており、重希土類を含まない高性能な磁石を量産化した技術は高く評価できる。また、新規開発磁石をHEVモータに適用するためモータ設計技術を進化させ、高温で減磁しにくい新規形状のロータ開発とトルクリップルやキャビンノイズを低減した商品性の高いモータを開発し、新規駆動モータを搭載したHEV車の量産が全て小型車において実現した。材料、加工、設計を統合し、これまでにない新規のモータを開発した本技術の独創性、先行性は高く評価される。

 

3 将来展望
重希土類フリーの駆動モータは、小型のHEV量産車への搭載が完了し、今後、ハイブリッド化、電動化の動向に対応して搭載車種の拡大が図られる予定である。一方、重希土類フリーのネオジム磁石は、更なる高性能化が実現しており、重希土類フリーの駆動モータの大幅な性能向上が期待される。本モータは持続社会の構築に上可欠な技術であり、産業的・社会的波及効果は非常に大きい。