第66回大河内記念生産賞
電化非電化区間ともに走行可能な高速鉄道車両の開発
1 開発の背景と内容
鉄道発祥の地である英国ではいまだに非電化区間が多く、電化区間もディーゼルエンジン搭載車両が走行している状況で、環境性、省エネ性で問題があった。2007年に公示された旧式車両全面置き換えのプロジェクトへの入札にあたり、電化非電化区間ともに走行可能な高性能パワーユニットを開発するとともに、欧州鉄道規格や既存の鉄道インフラにも対応可能な鉄道車両の最先端の設計・生産技術を開発し、英国での鉄道車両大量受注に成功した。
2 特徴と成果
防振、排気ガス低減、単相・三相共用コンバータの最適化などの技術を駆使し、床下搭載可能なデュアルモードパワーユニットを搭載し、電化非電化区間をシームレスかつ快適に走行可能な車両を開発した。また、最先端のシミュレーション技術を駆使した解析主導設計技術を確立し、欧州の鉄道車両規格で要求されるさまざまなシナリオに対する検証を可能とした。さらに、既存の旧式鉄道インフラにも対応可能なデジタル化された車両制御・保安システムの開発、一貫した生産体制や検査の自動化などによる製品V&V(検証と妥当性確認)の高度化によって、グローバル展開可能な高性能で高品質な車両生産技術を総合的に確立した。
3 将来展望
英国では2009年に電化区間専用軽量車両Class 395が、2017年にデュアルモード車両Class 800が、2018年に高出力車両Class 802が、2019年に電化区間専用高速車両Class 801がつぎつぎに営業運転を開始した。これまでに総計1,247両の車両を受注しており、車両メーカビッグスリーに競り勝って受注し、英国でのシェアを大幅に拡大したことは高く評価できる。また、買収したイタリアメーカと、英国、日本の3か所でのグローバル生産体制を確立しており、ブレグジット後の展開や国内の鉄道技術革新への貢献にも期待できる。