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第69回大河内記念生産特賞

超高塗着エアレス塗装を基点とする
CO2削減自動車塗装システムの開発
トヨタ自動車株式会社
トリニティ工業株式会社

 

1 開発の背景と内容
カーボンニュートラル社会の実現に向けて、工場から発生するCO2排出量の削減が求められている。自動車生産工程において、CO2排出量の約25%が塗装工程から、またそのうちの約60%が塗装ブースからであり、塗装工程におけるCO2削減は喫緊の課題である。本業績は、塗着効率95%以上の超高塗着エアレス塗装技術を開発し、未塗着塗料が低減した結果、段ボールフィルタを用いた非常にコンパクトなドライブースを実現したものである。また、ドライ化により除湿不要な空調リサイクルも実現、塗装ブースのCO2排出量を約60%低減した。

 

2 特徴と成果
本業績は、エアを用いずに塗料と車両間の静電引力によって塗料を微粒化し塗着させる静電微粒化現象を用いたエアレス塗装によって、ミストの飛散を低減し、車両への塗着効率を大幅に向上させる塗装技術を世界に先駆けて確立した。塗着効率は、従来60%~70%程度であり、水を使って未塗着塗料を回収していた。本技術は、円筒状のノズルに多数の特殊な溝構造を配置し、回転力を加えて塗料を円周上に放出することで数百本の液柱を形成する。それぞれに対して静電微粒化現象を発生させて塗着効率95%以上を実現し、水に代わって小型の段ボールフィルタで回収することに成功した。また、ブース空調は温湿度調整が必要だが、水を使わないことで空調リサイクル装置の除湿機能を不要にし、ブース、空調装置、塗料回収システムすべてをダウンサイズすることで他に類を見ない超コンパクト塗装ブースを完成させた。全ての技術を採用した塗装ブースは、従来比で容積を約70%、CO2排出量を約60%削減する。各技術は個々に工場に導入され、2021年の世界生産で延べ643万台の利用実績があり、同業他社や他産業にも提供して利用が拡大している。

 

3 将来展望
カーボンニュートラル社会の実現は、世界的な最重要課題の一つであり、工場からのCO2排出量低減は今後さらに要求が高まるものと予想される。本業績の成果は、現在は中塗り、クリア工程へ適用されているが、全工程への適用可能性も検討することで、さらなるCO2削減が期待される。また、既設ラインへ先行導入しているが、新ラインに対してフルパッケージで導入されていくことで、自動車生産における塗装工程からのCO2排出量が大幅に低減するであろう。鉄道や建機、農機など他業種へも広く提供することで、グローバルでの環境課題、カーボンニュートラル達成に貢献することが期待される。