第69回大河内記念生産賞
Cu-Cu接続を用いたヘテロジニアス積層型高精細SWIRセンサの開発
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社
1 開発の背景と内容
短波長赤外(SWIR)イメージセンサは、可視光では識別できない対象物質の感知・検出を可能にする高性能赤外線カメラの中核デバイスとして、産業用途を中心に近年需要が拡大している。本業績のSWIRセンサは、新しい生産方式の開発により、業界最小の5μmの画素サイズと134万画素からなる高精細化を実現し、2020年に量産が始まっている。
2 特徴と成果
本業績のSWIRセンサは、III-V族化合物半導体からなるSWIR光電変換部と大口径ウェーハ上に作製されたSiロジックLSIを、Cu電極同士のウェーハ貼り合わせ接続し3次元集積化する新規製造方式により製造される。この製造方式では、大面積化が難しい上に機械的に脆いため、熱膨張率がSiとは異なる化合物半導体を個片化して、大型Si支持基板上に移載・配置し、実効的な大面積化を実現している。その上で、センサ部を作製する工程と、この化合物半導体画素上とSiロジックLSI上に形成したCu電極の表面を十分平坦化し、Cu-Cu接続により直接貼り合わせて、接合する工程を組み合わせることで、高解像度、高可視光感度SWIRイメージセンサを高い歩留まりで量産化する高生産性技術を確立している。事業規模はまだ十分大きい訳ではないが、年々増加しており、シェアや応用分野も拡大している。
3 将来展望
SWIRセンサは、今後、産業機器、医療、セキュリティ、車載向けの新しい応用が期待できることから、今後の伸長が期待される。また、本センサを量産化する際に採用された独自の生産方式は、申請企業で長年培われた半導体製造の前工程と後工程を融合するプロセス開発思想を通じて実現されたものであり、今後の半導体集積システムの技術革新の方向性であるチップレットアセンブリや3次元集積化、異種材料デバイス(ヘテロジニアス)集積化の要素技術としての展開も強く期待される。