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第70回大河内記念技術賞

サイバーフィジカルシステムによる高炉操業の自動化
JFEスチール株式会社 橋本 佳也 他4名

 

1 開発の背景と内容
溶鉱炉(高炉)の操業では、CO2排出量低減を目指すため還元材(コークス・微粉炭)の使用量削減と安定操業が喫緊の課題である。この課題を克服するには、人の経験値と勘による手動操業から、効率的で安定な自動操業を実現する必要がある。本開発では、溶銑温度予測のための高炉内反応物理モデルの各種パラメータの自動調整を実高炉センサーデータへのデータ同化により実現するとともに、多変量プロセス解析に基づく高炉内のガス流れの異常(吹き抜け)予知の手法を確立し、自動操業への活路を拓いた。加えて、効率的かつ安定な操業のための最適アクションを算出する自動制御システムを開発し、実高炉での運用を可能にし、当該システムを当該社内の全8高炉に導入した。

 

2 特徴と成果
高炉操業の自動化に世界に先駆けて成功し、効率的で安定な操業およびCO2低減の両立を実現した。高炉操業による大きなプロセス変動を抑制するため、高炉内反応物理モデルを用いた数値計算による8~12時間先の高炉内温度予測を基盤とした溶銑温度制御法と炉内圧力測定データを活用した異常検知技術による通気性制御法を自社独自で確立し、それらを自動制御システムとして構築して、実際の高炉操業現場で実用化・運用し、高炉の効率的で安定した自動操業を実現した。学術業績に加え、トラブル発生を想定した換算は難しいもののトラブル発生抑止効果として30.4億円/年、製造コスト削減(5.43億円/年、当該社概算)およびCO2削減(47 kt/年)を実現した。操業現場ではほぼ100%の自動操業を実現しており、2020年から当該システムを全8高炉に順次導入を行い、全社的に効率的で安定な自動操業を実現した。また、当該システムの世界展開に向けて、実証試験中である。

 

3 将来展望
当該自動操業システムは、技術内容の保護とともに、アジアを中心に世界的な技術展開が予定されている。これらの取り組みは、我が国の社会的・経済的効果に加え、エミッションゼロへの貢献も期待できる。さらに、当該技術を他の製造プロセスや直接還元製鉄法などの次世代還元プロセスへ展開することも視野に入れられており、今後のさらなる展開と発展が期待できる。