第70回大河内記念生産特賞
最大2.3t可搬の大型6自由度多関節ロボットの開発
ファナック株式会社
1 開発の背景と内容
産業用ロボットは様々な製造現場の自動化率を高め、製造品質や生産性の向上に貢献している。しかしながら、従来はロボットの搬送能力不足から1 t を超える自動車のボディや大型加工部品・金型など超重量物搬送へのロボット導入は困難であった。本業績は1 t を超える超重量物を広範囲に搬送でき、搬送物の向きを自在に変更できる強力な手首許容負荷を有する6自由度多関節ロボットを実現したものである。
2 特徴と成果
本業績で開発した大型6自由度多関節ロボットでは、1 t を超える超重量物の搬送を実現するために、各軸にモータを2本ずつ配したデュアルドライブ・トルクタンデム制御方式を採用し、2つのモータを1つの大型減速機に入力することで、振動の無い滑らかな動作、超重可搬、高精度位置決め、および、コンパクトな軸構成を実現している。特に、根元に近い軸では強力な駆動トルクが必要となるため、強力な耐荷重を有するコンパクトな大型減速機を開発することにより超重量物搬送を可能としている。一方で、電源回生やロボット停止時の自動ブレーキ・ファン停止などの省エネ機能で、ロボットの大型化に伴う消費電力の増加を抑制する配慮がなされている。圧倒的な可搬能力を活かし、自動車、建設機械、航空機、鉄鋼、重工など様々な製造業の現場で採用されており、1350 kg以上では競合他社が存在しないために、100 % の市場占有率を達成している。
3 将来展望
近年では電気自動車の本格普及に伴い、大型バッテリユニット搬送への適用が急増しており、全世界的な社会課題である省エネ・カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な電気自動車の製造に大きく貢献すると期待することができる。また、生産効率の向上や車体軽量化のため、複数鋼板の組み合わせからアルミ合金などで一体成型する工法も登場したことで、大型車体の搬送で本ロボットの大幅な普及が見込まれる。さらに、物流分野などこれまでにロボットを使用していなかった新分野への普及も期待することができる。