第70回大河内記念生産賞
形状記憶性を利用した硬質塩化ビニル管による
管路更生工法の開発
積水化学工業株式会社
東京都下水道サービス株式会社
足立建設工業株式会社
1 開発の背景と内容
日本の下水道管の敷設総延長は49万kmに達するが、特に20万kmを越える30年経過管での破搊が急増し喫緊の対策が必要となっている。その7割を占める呼び径φ400mm以下の老朽化下水道管を対象として、施工事業者との協働により非開削で老朽管を新管同等に更生できる新工法を開発した。オメガ型形状に折り畳んだ硬質塩化ビニル管を老朽管内に引き入れ、その形状記憶性を利用して同管内で円筒形に復元し新管を形成するもので、施工方法、施工機材の開発、管厚・耐震設計理論の構築、検証方法の確立と認定の取得を行い、今日広く老朽管の更生に適用がなされている。
2 特徴と成果
長期の耐食性、耐薬品性、耐摩耗性に優れる硬質ポリ塩化ビニルを基材に、独自のグラフト重合技術と相溶性改質剤により耐衝撃性、変形に対する柔軟性、高施工性を付与した独自樹脂を設計・開発した。同樹脂をパイプ形状に押出成形し、残留ひずみを制御しつつ断面をオメガ型形状に予め変形させ、折り畳んでドラムに巻き取り施工現場に搬入する。ドラム上のライナーを予備加熱しマンホールより既設の下水道管に引き込み、形状記憶性を利用して蒸気加熱により円筒形に復元後、圧縮空気で既設管に密着させ施工を完了する。同工法(オメガライナー工法)は、下水道管の過酷な環境下で、施工面での品質上具合を起こさず、隣接マンホール間を非開削にて更生でき、φ150~400mmの小径管に適用できる。更生管のみで自立強度を発現でき、施工業者が導入しやすい各種施工機材の開発とともに低コスト化を実現している。同工法は既存技術のCIPPを置換しつつ、国内のみの適用実績ながら施工実績624㎞、過去3年間で80億円以上、国内シェアは13.8%と今後さらなる適用拡大が見込まれる。
3 将来展望
老朽化という喫緊の社会的課題を背景に継続的な適用の拡大が見込まれる下水道管だけでなく、同様に老朽化が進む水道用・農業用・電力用・通信用管等の管路更生技術にも同工法は適用が進められている。老朽化が進むライフラインの更新、社会インフラの維持に今後大きく貢献できるものと期待される。