第70回大河内記念生産賞
高輝度・高精細なOLEDマイクロディスプレイの開発と量産化
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社
1 開発の背景と内容
ミラーレスカメラが登場した当初、電子ビューファインダー(EVF)は性能が足りず、ミラーレスカメラの「撮影画像をそのまま見られる《という特長を活かすことが出来なかった。本業績は、OLEDディスプレイ(「世界初有機ELテレビの開発と量産化《:第55回(平成20年度)大河内賞技術賞を受賞)や、シリコンイメージセンサー生産技術などを基礎とし、高輝度・高精細・広色域などの特性に優れ、現在、多くのミラーレスカメラのEVFに使用されるに至ったOLEDマイクロディスプレイの開発とその量産を可能とした生産技術に関するものである。
2 特徴と成果
高精細OLEDマイクロディスプレイの実現には、画素駆動回路の小型化、隣接画素の混色対策、EL発光の効率のよい正面への取り出しなどの課題がある。本技術は、従来のガラス基板とは異なりシリコン回路基板上に、白色EL発光層、カラーフィルター、マイクロレンズの4層で構成されている。シリコン回路基板では表示面内画素の輝度を均一に駆動する自己補正機能付き高精細画素駆動回路を、混色対策には独自のオンチップカラーフィルターを、そして、高輝度化にはオンチップマイクロレンズとそれぞれ技術を開発。その結果、プロフェッショナル用途にも採用される高画質のディスプレイパネルの製品化を実現し、ミラーレスカメラの普及に貢献している。更に、今後の市場拡大が期待されるVR-HMD向けに対角1.3型で4k(1,300万画素)の開発など、将来に向けての技術開発も継続的に進んでいる。
3 将来展望
2011年の量産開始後もさらなる高性能製品の開発が継続されており、当該製品の普及に伴って拡大してきたミラーレスカメラEVFの市場は今後も堅調に推移するものと予想され、ハイエンド向けは今後も当該製品がけん引していくものと思われる。また,今後はAR/VR/MR-HMD市場の成長とともに需要拡大が見込まれる。当該製品の有機ELパネル製造工程は同社の熊本工場、最終検査とモジュール化後工程は同社のタイ工場で生産しており順次増産に対応する予定である。本業績はマイクロディスプレイ分野の技術発展と市場拡大に継続して貢献していく事を期待されるものである。