第70回大河内記念生産賞
電界吸収型光変調器を集積した
半導体レーザーダイオードの開発
三菱電機株式会社
1 開発の背景と内容
電界吸収型光変調器を集積した半導体レーザーダイオード(EML:Electro-absorption Modulator integrated Laser diode)は、DFB(Distributed Feed-Back)レーザと電界吸収型(EA:Electro-absorption)変調器をモノリシック集積したもので、高速動作/長距離伝送の特長から、データセンター向け光トランシーバーには、業界初採用、FTTH(Fiber To The Home)等にも用いられる。三菱電機は、30年に及ぶ技術開発により、二つの機能素子の光導波路を連結する構造の複雑性を、突き合わせ接合形成技術や、アルミ系材料開発による性能改善により克朊し、更に、低コストで大量生産に適した、ペルチェ素子内蔵、高精度高密度実装のTO-CAN型モジュールを開発し、この業界標準化を果たした。
2 特徴と成果
EMLの生産は、国内のみで、伊丹の高周波光デバイス製作所では、ウエハプロセス、長崎のメルコアドバンストデバイス(株)でモジュール(TO-CAN型)化を行っている。EMLは、埋込型導波路LDとハイメサ型導波路EAのハイブリッド導波路集積のため、高さと位置ずれによる結合搊、隙間による反射、結晶異常成長による散乱から光搊失が生じるが、これを独自のプロセスパターン合わせやエッチング加工による工夫などで解決した。同社のEMLは100 Gbpsの高速素子が市場に投入され、2023年には200 Gbpsの開発成功も発表、400 Gbpsも射程に入っている。2024年から200Gbps×8chの光トランシーバーは市場投入される。データセンター向けEMLチップでは、月産150万個、シェア50%、FTTH向けTO-CAN型EMLモジュールでは、月産24万個、シェア30%を達成している。2022年実績で出荷額184億円、世界シェア42%を誇る。これらの製品の開発及び生産は、独自のシミュレーションや材料開発、プロセス技術により支えられている。
3 将来展望
FTTHのアクセス系光通信網やデータセンター内通信には既に、広く普及しているが、DXが進み、今後、ポスト5G時代を迎え、NTTのIOWN構想など光電融合時代には、更に期待が高まる。新規分野では、生成AIの処理向上やGXに向け、ボード間接続等も光化すると見込まれ、市場はさらに拡大しそうである。国際競争力では、GAFAなど海外顧客向けが大半と、国内外の競合デバイスメーカーがいる中で、長年培った技術から、今後も優位が続くだろう。