第70回大河内記念賞
通信・自動車市場向け薄層大容量積層
セラミックコンデンサ用誘電体材料の開発および量産化
株式会社福井村田製作所 矢尾 剛之 他2名
1 開発の背景と内容
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、スマートフォンや自動車・基地局・サーバーなどの様々な電子機器において、安定動作のためのノイズ除去や電荷供給用途に使用されている。それらの小型化・データ量増加・安全機能化に伴い、より小型で大容量かつ高信頼性のMLCCが求められている。本業績は、優れた特性を持つチタン酸バリウム(BaTiO3)系誘電体材料の開発、および精密に制御された誘電体層と内部電極との積層構造の形成により、MLCCの小型化と大容量・高信頼性の特性を実現したものである。
2 特徴と成果
高誘電特性・絶縁耐性を得るには、粒子内部の高結晶性と粒界部での高電気抵抗が必要となる。微細で均一粒子径のBaTiO3粒子の形成、副成分の均質添加、粒子分散、および薄層化におけるプロセス設計を行い、求められる特性を持つ誘電体粒子の製造と誘電体層厚さ0.5mmの薄層大容量MLCCの開発に成功した。さらに、積層・焼成プロセスの制御により、均一厚さの誘電体層、内部電極との緻密な積層構造を形成することで、特性の経時劣化が少なく環境温湿度の影響が小さい高信頼性を実現し、用途に応じたサイズと容量の各種MLCCの量産化に成功した。
3 将来展望
小型大容量で高信頼性のMLCCの開発・量産化は、各種電子機器やモジュールの小型化・高効率化・多機能化に大きく寄与している。通信分野や自動車分野は今後とも発展し市場が増大すると予想されるが、本業績の優れた製造技術によりそれらの多様な用途への対応も可能であることから、MLCCの利用が大きく拡大すると考えられる。これにより、豊かな社会生活の構築や省エネルギー・省資源にさらに貢献することが期待される。