第50回大河内記念生産特賞
電力貯蔵用ナトリウム-硫黄電池の開発と実用化
年々増大する電力需要ピークへの対応策として、負荷平準化用の電力貯蔵技術の開発が強く求められていた。一方、ナトリウム-硫黄電池(NAS)は、エネルギー密度が高く、高効率、長寿命な高性能蓄電池であり、電力の負荷平準化ができるとともに、落雷等による瞬時電圧低下や停電発生時のバックアップ電源としても活用することが可能な大容量二次電池として、その開発に大きな期待が寄せられていた。
ナトリウム-硫黄電池は、1967年に米国のフォード社がその原理を発表して以来、これまでに各国の研究機関が開発に取り組んできたが、その耐久性や安全性および経済性を達成することが出来ず、実用製品の開発には至らなかった。
この電池を実用化することができたのは、(1)信頼度の高い大型セラミックス製の固体電解質を安価に製造できる技術が確立できたこと(2)電力設備として長期に亘る耐久性と安全性を維持するためのシール技術や防食技術などを独自に開発し、実フィールドでの技術検証を繰り返すことによって、それぞれの技術の完成度を向上させ、実用化に不可欠な信頼性と経済性が確立できたことである。
2001年より一般需要家への販売を開始しているが、コスト競争の激しいスーパーマーケットを初めとして、高い電力品質を必要とする半導体製造工場や供給信頼度が求められる水道局などへの設置が次々に進んでおり、今後も負荷平準化による電気料金の削減や重要負荷の救済、および地球環境保全に大きく貢献することが期待されている。